私は北海道で稲作農家をしています。最近、育苗のコストが半分に減って、さらに収穫量は変わらない疎植栽培という方法が注目されていると知りました。
うちの農家でもチャレンジしてみたいと思っているのですが、本当に収穫量は変わらないのでしょうか?
また、疎植栽培を始めると育苗コストはカットできたとしても、これまで使用していた田植え機が使えなくなるなど別の弊害も出てきて、今以上にコストがかかってしまうのではないかという心配もあり、なかなか導入に踏み切ることができずにいます。
疎植栽培を導入する際のメリットとデメリットを教えていただきたいです。よろしくお願いします。
(北海道・山本茂樹さん/仮名・50代)
井関農機㈱ 夢ある農業総合研究所
井関農機株式会社
疎植栽培は温暖地域に適した技術です。環境によっては別の選択がベターなケースも
疎植栽培とは、植え付ける株と株の間を広げることで使用する箱数を減らす技術です。
一般的にいわれている疎植栽培のメリットは、株の間隔が慣行栽培と比べて広くなるため、植苗にかかる資材費や省力化による労働時間などのコストが削減できるというものです。
株間が広くなることで、穂がV字に広がる空間ができ、株元の葉まで太陽の光がしっかり当たり栄養が行き渡るため、大きな穂に育ちやすく収穫量アップが期待できるのです。
また、株間の風通しが良くなり、いもち病や紋枯病などの病気が発生しにくく、丈夫な稲を作ることができますよ。
メリットの多い疎植栽培ですが、地温が低い寒冷地や寒暖差の激しい山間地等では、十分な茎数を確保できない可能性がありますので注意が必要です。
株数を減らして行う疎植栽培では、欠株してしまうと収穫量に大きく影響が出てしまいます。
茎数が増えにくい品種を栽培されている場合は、多収品種へ切り替えて疎植栽培にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。
実際に寒冷地の多い北海道では多収品種等での導入が行われています。相談者さんも北海道で稲作をされているとのことですので、栽培環境や品種、株数を確認してみてください。
現在使っている田植え機についてですが、植え付ける株数をどの程度にするかでお持ちの田植機で対応できるかどうか変わってきます。
一般的な疎植は、1坪50株未満程度の密度で植えることが多いのですが、北海道では他地域と比べ、1坪70株程度と株数が多い傾向があります。
少し株間を広げるだけでも疎植栽培の効果を得られるはずです。事例としては、70株から50株に変更して栽培している生産者の方もいらっしゃいますよ。
疎植栽培は、どちらかというと温暖な気候のエリア向けの技術です。
北海道などの寒冷地では、疎植と同じように苗箱を減らす技術として密播(高密度播種)で育苗を行う方法もあります。