佐賀県のみかん農家です。
先日、雑誌でソーラーシェアリングの記事を読みました。
内容は「農業をしながら売電収入が見込め、栽培にも影響がないためメリットが大きい、今注目のシステム」だというものでした。
最近副業や複業が普及しつつありますが、農業の世界でもそういった時代に合わせた考え方を持つべきなのではと思っています。
農業をしながら取り組めるなら是非挑戦してみたいのですが、導入方法や、誰でも始められるのか、費用や注意点など、詳しく知りたいです。
ちなみに我が家は2ha程度の農地で、土地の大きさによって向き不向きがあるかなども知りたいです。
(佐賀県・木村さん/仮名・40代)
石川和男
社会保障経済研究所代表/政策アナリティスト
太陽光発電は申請すれば誰でも参画可能。ただし管理は外注がベストです
ソーラーシェアリングとは、農業分野では「営農型太陽光発電」と言われています。
農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有するものです。
農作物の販売収入に加えて、売電による継続的な収入が見込まれるため、農家にとってはメリットが大きい話です。
少し前まで農林水産省は、太陽光発電の設備を農地に設置することが「農地転用」になるとして認めていませんでした。
しかし現在では、一転してこの仕組みを認可しています。日本政府が2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」という目標を掲げたため、太陽光発電は今後もさまざまな形で普及していくでしょう。
ソーラーシェアリングの導入方法は、大きく分けて
1、農家は土地を貸し、営農も発電も外注
2、農家は発電用地として土地を貸すが、営農は自ら実施
3、農家は営農も発電も自ら実施(太陽光発電設備の管理等は外注)
の方法があります。
台風や大雨、雹(ひょう)などの自然災害で、太陽光パネルが破損した場合の修繕を考えると、3は現実的ではないと思います。
結論としては、発電の管理保守を外注する1または2で、テナント料収入として運営する方法がおすすめです。また、農地転用の申請は必要ですので忘れずに行いましょう。
外注業者を探す際のポイントは、信用できる太陽光発電事業者かどうかです。
基本的には、電力会社やガス会社などエネルギー事業者系の会社は安心ですので、Webサイトでこれまでの実績などを比較してみましょう。
補助金などがあるかもしれませんので、市町村の窓口があるかも調べてみてくださいね。
生津賢也
一般社団法人ソーラーシェアリング協会
どんな土地・作物にも採用可能!ソーラーシェアリングは柔軟なシステム
ソーラーシェアリング協会は、ソーラーシェアリングの設計・施工から農業コンサルまで一貫して行う実績ある団体です。具体的な導入ポイントについて、アドバイスさせていただきます。
まず、どんな土地でもできるかという点についてですが、都会の狭小地であろうと広大な土地であろうと、作物の栽培ノウハウと知恵を使えば、どんな土地でも導入は可能と言えます。
例えば、私たちはソーラーシェアリングで水耕栽培を行っていますが、収穫量は良好です。
くわえて、ソーラーシェアリングを採用することで適度に遮光できるうえ、パネルと土壌の間の空間で湿度が保たれるため、それが土壌に浸透して、作物がよく育つという実証データもあります。
さらに、冬には放射冷却を防いで霜が降りなくなるといったメリットも報告されています。
自然災害が起こったとき、自家発電でエネルギーも食料も得られて自給自足がかなえられることは、日本が今、直面している課題の解決にもつながります。
また、ソーラーシェアリングは遮光率を変えることでどんな作物にも採用することができます。
トマトやサトウキビのように、日光がたくさん必要な作物もありますが、その場合は遮光率を10%から20%に少し絞ったり、逆に光合成を必要としないキノコ類の場合は遮光率100%にしたりして調整できます。
質問者様はミカン農家ということですが、傾斜地だと導入コストは割高になってしまうかと思います。
また、山の斜面は太陽光の当たる角度が限られるため、発電・売電量が限られる場合もありますが、見積もりを取ってみないことには一概には言えません。
具体的に、1000平米(1反)で遮光率40%程度で導入しようとすると、ソーラーパネルを設置する初期費用は概算で1,500万円程になります。
少し高いと感じるかもしれませんが、頼れる施工業者を探して相談する価値は充分にあると思います。