長崎県で、魚の養殖業をしている者です。
私たち養殖業者は早朝に出勤するため、残業がなければ午後3時ごろには仕事が終わります。
ですから、午後からわりと時間に余裕がある日が多いです。
また、繁忙期はそうでないこともありますが、休日もしっかり確保されています。
そうしたなか、私は泳ぎが得意なので、空いている時間や休日を利用して素潜り漁ができないかと考えています。
しかし、素潜り漁を行うにはさまざまなルールが設けられているため、密漁にあたるリスクを考えて、実行していません。
ときどき、素人が素潜りで魚や貝などを獲って通報されたというニュースを見かけます。
そうしたニュースを見て思うのは、制度をしっかり理解していないと、地元漁師や警察に迷惑をかけるだけだということです。
そこで、素潜り漁を行う際の届け出や、潜っても良い漁場、捕獲できる魚貝類の種類など具体的なルールが知りたいです。
(長崎県・瀬戸さん/仮名・30代)
馬場 治
東京海洋大学名誉教授
素潜り漁をする際は県の水産担当部署に確認しましょう
現在、養殖業をされているとのことですが、地元漁協の組合員になっているかどうかがまず前提となります。
漁協の組合員でなければ、厳密には密漁となる可能性が高いと考えた方が良いです。通常、沿岸部には漁協が県から免許を受けた「共同漁業権」と呼ばれる区域が設けられています。
この共同漁業権の区域内では、指定された水産動植物が漁業権の対象種とされており、該当する漁協の組合員以外は採捕することができません。
どのような種が漁業権の対象種となっているかは、漁協が所有している「漁業権行使規則」のなかに記載されていますが、一般的には有用な水産物はほとんど対象となっていると考えた方が良いです。
貝類、海藻類、イセエビ、ウニ、タコ、ナマコなどはほとんど対象となっています。
ただし、魚類は共同漁業権の対象とはなっていませんので、漁業権区域内で素潜りで採捕することはできますが、使用する器具が県の規則で許されている物かどうかを確認する必要があります。
魚類を素潜りで採捕することは組合員でなくてもできますが、漁業者以外には禁止されている器具があります。
これは、各県の「漁業調整規則」によって規制されており、県によって多少異なります。
例えば、神奈川県や静岡県では、発射装置を有するモリは一般市民(漁民以外)には認められていません。
さらに、水中眼鏡とモリを併用することも許されていませんので、裸眼で潜って、発射装置のないモリで魚を突くという、ほとんど不可能な状況でしか認められていません。
テレビ番組で、タレントが海に潜って魚を突いて獲るというシーンで「地元漁協の許可を得ています」と表示していることがよくあります。
しかし、もしその場所が漁業権内であっても、そもそもモリが使えるかどうかは漁協の許可の範囲ではなく、県の規則で認められているかどうかですので、意味のない表示です。
いずれにしても、もし素潜り漁をされるのであれば、県の水産担当部署に確認することをおすすめします。