素潜り漁のほか、ひき縄漁などもやっています。
アワビなどを素潜りで取るときに使う手袋に関する質問です。
以前は軍手を使っていましたが、海藻が付いたり、穴が開いたりして使い勝手が良くなかったため、その後は背抜きのゴム手袋にしました。
ところが指の背の方の布が弱く、すぐに穴が開いてしまいます。
そこで、今は指全体や手の甲までしっかり防水できるような天然ゴム貼りの手袋を探して着用してみたりしています。
ただ、耐久性は良いものの、やはり背抜きに比べると通気性が悪く、一長一短があります。
防水仕様ですべりづらく、耐久性があって、しかも通気性もあるというような製品はないものでしょうか?
(千葉県・鈴木洋一さん/仮名・30代)
本間俊輔
株式会社水土舎主任研究員
素潜り漁に適した手袋は、ネオプレーン製やダイビング用の手袋がおすすめです
現場ではさまざまな漁具やロープを扱い、硬い殻や鋭いトゲをもつ魚介類を漁獲します。
そのため、手の平にかかる負担やケガの危険は他の産業とは比べものにならないほど大きくなります。
漁業者が素手で作業をする場面は網の補修や仕掛け作りなどの限られたケースで、現場の作業は何らかの手袋(グローブ)を着用して行うことがほとんどです。
漁師にとって手袋は、冬の寒さから手を守るだけでなく、漁具や魚介類によるケガを防ぐためになくてはならない道具といえます。
ひとくちに漁業用の手袋といっても、網を揚げる際に使うビニール製の手袋や、牡蠣などの貝類を扱うための軍手、冬季の防寒に重きを置いたものなど、種類や用途は多岐にわたります。
素潜り漁に用いる手袋についても、軍手のような布製の手袋から、厚手の天然ゴム製の手袋、透湿性を持つ化学繊維や合成ゴムを用いたものなど、たくさんの種類があります。
布製の軍手は値段が安く手に入りやすい反面、汚れが付きやすかったり、すぐに破れてしまったりするなどの欠点があります。
天然ゴム製の手袋の場合には耐久性は抜群ですが、通気性がまったく無いために、蒸れが気になることが多いのも事実です。
私が最もおすすめしたいのは「ネオプレーン」と呼ばれる素材を用いた手袋です。ネオプレーンは伸縮性や柔軟性、撥水性に優れており、厚さを調整することによって保温性を持たせることもできます。
元は軍事用途向けに開発されましたが、最近はさまざまな製品に使われており、ウェットスーツの素材としても有名です。
漁協の購買などで売られている水産用の手袋の中にも、最近はネオプレーンを使用した手袋をよく見かけるようになりましたが、まだまだ軍手やゴム製の手袋が主流です。
手に入りにくい方におすすめしたいのはダイビング用のグローブです。
ダイビング用のグローブは当然ながら水中での使用を前提に作られており、レジャー用ということもあって快適性にも優れたネオプレーン素材を用いたものがほとんどです。
また、ダイビングはサンゴ礁で行うことが多いため、先の尖ったサンゴから身を守る必要があり、ある程度の耐久性を備えているものも多いです。
水産用の手袋と比べるとやや値段が張ることが短所にはなりますが、最近では手ごろな価格の製品も多く販売されています。
こうしたダイビング用のグローブを選ぶ際の注意点ですが、まずは耐久性を重視して選ぶことが大切です。
サンゴ礁での使用を前提としているとはいえ、ダイビングはあくまでもレジャー用ですから、ファッション性を重視した製品も少なくありません。
見た目ではなく、生地の厚みや手のひら部分の素材をよく見て、なるべく丈夫そうなものを選びましょう。なかには手の平側に厚手のゴムなどの素材を使用しているものもあります。
ダイビング用のグローブには、春夏秋の3シーズン用のものと冬用の防寒性の高い製品の2種類があり、それぞれ生地の厚みなどが異なります。
そこで、使用される漁期や漁場の水温などに合わせて選ぶことが重要です。また、季節や水温に合わせて複数のグローブを使い分けることで、より快適に素潜り漁を行うことも可能になると思います。
ダイビング用のグローブを購入できるお店に行くことが難しい場合には、作業用品のお店やホームセンターなどでも、ネオプレーン製の手袋が販売されていることがありますので、覗いてみてはいかがでしょうか。