テンサイや馬鈴薯などを中心に畑作をしている農家です。
長年、腰痛に悩まされています。
その原因はトラクターへの長時間乗車だと思います。畑作ではトラクターに乗っての作業は欠かせず、プラウ耕起や収穫作業、防除などで一日中運転することもあります。
しかも、体を右に捻って後ろを向きながら運転することが多く、振動も加わって、作業後は腰痛がひどくなってしまいます。
最近のトラクターは、変速レバーや作業機昇降スイッチなどの操作装置が右側についているので、体を捻りながらの作業は欠かせず、腰痛の解決にはなりません。
トラクターに乗る際に腰痛を防いでくれるような作業着やアシストスーツはないでしょうか。
(北海道・佐藤正広さん/仮名・50代)
逢坂大輔
株式会社シーエフロボタス
トラクター運転中の腰痛対策には「座席の工夫」「冷え対策」「全身の筋肉を使う」ことが予防につながります
長時間の車両運転が原因の腰痛は、車種を問わず職業ドライバーさんに共通した最大級の悩みですよね。
特に、広大な農地を走るトラクターでは、通常の道路を走るよりも体が受ける振動は大きくなり、緊張や疲労として蓄積されてしまうことでしょう。
「トラクターと腰痛」は、昭和の時代から指摘されている問題です。トラクター運転中の「振動」「冷え」「長時間の同一姿勢」 「座りっぱなし」などが原因となって、腰や背中の筋肉に過度な緊張が起こり、腰痛が出やすい体になってしまうのです。
つまり、背中から腰、お尻の筋肉が固くなってしまうため、腰がだるいように重くて不調になる“慢性腰痛”や、ふとした弾みでギックリ腰を起こしてしまう“急性腰痛”のどちらもが起こりやすい状態の体になっているのです。
体が資本の農家の皆さんには、ぜひ対策をとっていただきたい問題です。
私は、理学療法士・作業管理士でもあるので、いくつかの対処法をご紹介します。
1:長時間座りっぱなしだからこそ、シートに工夫を。
例えば、高機能のクッションなどを活用することで、車体からの振動を逃がすような座席を作ることも大事です。
車種によっては、操縦時の振動を低減する取り換え用のシート(トラクターシート、オペレーター用シートなどで検索してください)もあるようですね。
2:冷え対策を。
貼るカイロなどの保温材や温度調節式のウェアを着こむことも良い対策ですね。
体が冷えると腰の筋肉などが固くなりやすいので寒い地域には必須の対策です。
3:体の左右の筋肉をバランスよく使う。
また、体を右側に捻りっぱなしという状況も良くありません。捻りっぱなしの作業時間をなるべく減らすように心掛けていただきたいです。
右側にばかり捻ったままの時間が続くのであれば、反対の左側にも捻って、全身の筋肉をバランスよく使うよう、帳尻を合わせる工夫も大事です。
農機具の操縦だけではなく、デスクワークの人も同じような問題を抱えているので周辺環境を整えるなど、工夫が必要です。
体を傾けたり、捻じったりする方向は、なるべく偏らないように気を付けたいものですね。
腰痛対策には、作業環境の工夫にくわえて、日頃からの体作りも重要ですから、腰が痛くなりにくい体へ仕上げることにも取り組んでみてください。
ポイントは、腰や股関節周りのストレッチ、首や肩から背中にかけてのストレッチで、柔軟性を高めることです。
腹筋や背筋などの強化運動も必要に応じて取り組む方が良いでしょう。
「限界を上げる」という言葉があるように、農業の過酷な作業場面でも耐えられる体へと整えていくことが何よりも重要です。
ストレッチについてはトラクター乗車の前後に行うと、さらに効果が期待できますね。
結論としては、腰を守るアシストスーツでは残念ながら用途外になりますので難しいかと思います。
腰を守るツールとカラダメンテナンスを上手に組み合わせて、過酷なシーズンの作業を乗り越えていただけると嬉しいですね。