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自家採種した種で循環農法を行いたいが、次の作物を植えられないデメリットをどうすべき?

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自家採種した種で循環農法を行いたいが、次の作物を植えられないデメリットをどうすべき?

野菜作りを行っている農家です。減農薬を意識して、農薬や化学肥料の使用をできるだけ抑えています。

また、土壌環境を良くするために輪作し、緑肥作物も取り入れることで連作の影響を抑えています。

今手がけている作物の多くは苗屋から購入した苗や、市販のF1種を用いた慣行栽培ですが、ゆくゆくは自然農法へ置き換えていきたいと思っています。

最終的な理想は、自家採種した種で循環農法をすることです。

でも、自家採種を手がけていらっしゃる農家さんでは、とても手間がかかるうえに、収穫期を過ぎた野菜が畑に長く残るそうです。

次の作物を植えられないというデメリットは、どのように克服すればよいでしょうか?
(埼玉県・高野さん/仮名・30代)

田中大樹

Junkan農園

苗の生育や肥料に気をくばり、自身の土の性質を知ったうえで対応しましょう

相談者さんは今は、苗屋で苗やF1種を購入して慣行栽培をしていらっしゃるんですね。苗を購入する際に見るべきポイントをお知らせしますと、根鉢(根と根のまわりについている土)がうず巻き状に巻いているときは、主根(直根)が優位で育っていると判断していいでしょう。

こういった主根優位の生育の場合は、水や窒素肥料を活発に吸収しますが、アブラムシなどの虫が付きやすく、その後、病気にもかかりやすい状態だと思いますので、側根の生育を促し、栄養成長と生殖成長のバランスのいい苗に方向付けし直す必要があります。

このとき、基本は主根と側根の深さを同じにするように移植し直すことです。

苗のポットなどに深さ半分くらい土を入れ、そこへ苗の根の深さをそろえ、主根と側根が同じ深さで、下に向かって成長していくようにすると、主根が暴れることがなくなります。

発達した側根の先端細胞でミネラル吸収が活発になるといわれています。細かい根がびっしりになった苗を目指しましょう。

この主根と側根の誘導は、ナス科、ウリ科などでは、通常、発芽→双葉の展開→本葉が米粒くらいの大きさになったタイミングで行いますので、やはり、種まきからご自身で行われた方が簡単です。保温にお悩みでしたら、農電マットの購入をおすすめします。

自然農法への心構えですが、虫や病気の出にくい育ちに誘導することが、減農薬、無農薬にもつながります。

肥料は、化学肥料よりも有機肥料がおすすめです。化学肥料の窒素は根にすばやく吸収されますが、両立してミネラルを吸収するための細根(先ほどの側根)を発達させることはできないため、悪天候に晒されると作物の健康維持が難しくなります。

それに対して、発酵処理を終えた有機態窒素の肥料は、炭素化合物であり、土の中の微生物の餌となります。

肥料→微生物⇄根という関係が生まれます。収穫物の栄養成分であるビタミンやミネラル、糖分、そして旨味成分に大きな差が出てきます。

市販されている有機肥料も千差万別で、高価だから良い肥料ということはありません。いくつか候補を見つけたら、水を含ませて、数日で臭いにどのような変化が生まれるかをみてみましょう。

アンモニア臭が出て、ハエが飛んでくるようなら、その肥料は無機態の窒素が多く含まれていると判断できますので、おすすめできません(鶏糞など)。

有機肥料は、水を含ませると香ばしい匂いになります。虫が寄ってこなければよい働きが期待できます。大和肥料社の「農産発酵こつぶっこ」という製品は成分も高く、発酵処理を終えていますので、おすすめです。

また、元肥(植え付けるときなどに事前に与える肥料)以降の追肥期間の手入れでは、地表面の水分、団粒構造の安定という意味で、地温を下げすぎない適度の敷き草が微生物の住処となり、肥料効果も長持ちし、大変有効です。

そして、生長点(新しい細胞をつくる部分)を摘み、実を付ける方向に誘導する手入れも収穫量に反映されます。有機肥料でも化学肥料でも与えすぎないようにしましょう。

農文協の『自然農法センター編 自家採種コツのコツ』を参考にしてみてもいいかもしれません。自家採種は、畑の隅などに植え替えて行えるものもあります。また、採種したものは保管状態が良ければ数年は発芽しますので、都合で計画を立てられると思います。

F1の種子を用いることは農薬による種子消毒や採種農場での栽培まで含めると、厳密には自然農法では使用してはならないと言えるのかも知れませんが、私もそこまでには至っておりません。

個人的にはF1の種子は固定種に近いものから、作柄を限定した品種まで実に多様であり、専門的な知識と経験、そして、生産側のニーズが集積されている価値のあるものだと考えています。

最後になりますが、「e₋土壌図Ⅱ」というアプリで、ご自身の土の性質を調べることも施肥や自然農法に挑戦されるうえで、有効だと思います。以上、ご参考になれば、幸いです。

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竹下大学

技術士(農業部門)J.S.A.ソムリエ

3世代程度自家採種を試し、品目を絞って有望なものに注力しましょう

「理想を追求したいと」いうお気持ちが素晴らしいと思います。自家採種には利点があり、繰り返すうちに、その土地の環境に適した性質に徐々に変わっていきます。

そのため、品目によっては、市販の品種を買わずに済むようになるでしょう。

ただし、「すべての品目を自家採種に」とは考えず、3世代ほど自家採種してみて、うまくいきそうな品目に絞って採種を続けられるのがよいと思います。

場所の問題については、採種用の株は別の場所に移植したり、大鉢に植え替えたりするといいでしょう。そうすれば、すぐに次の作付けの準備に取りかかれます。

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