京都で食用米を作っている米農家です。
米作りにも慣れ、毎年安定した収量を見込めるようになってきましたが、時代の変化を受けて、生産物を一本に絞るのはリスクが高いと判断し、新たな農産物にチャレンジしようと思っています。
自分が酒好きということもあり、最近は酒米作りに興味を持っています。
食用米と品種が違うことは知っているのですが、栽培方法や酒米からお酒になるまでの具体的な流れについてはよく知りません。
まずは、栽培できるかどうかを知りたいので、酒米の栽培方法や栽培に適した環境について教えていただけませんか?
(京都府・森上さん/仮名・30代)
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
酒米の栽培は登熟を揃え、乾燥調整に注意。心白の形成を左右する水管理が必要になります
お米の用途は、主食用だけでなく広がっております。酒米は古くから使われている醸造用のお米になります。
お酒を造るときに、発酵の工程を経ることはご存知だとお思います。
お酒のお酒たる特徴は、麹でアルコール発酵することにあります。従って酒米は、発酵しやすいお米であることが求められます。
酒米をよく見ると、米の中心部分が白くなっています。
これは心白と言われ、米のデンプンのブロックが微妙にずれて、詰まりきっていない状態で白く見えます。
この部分は、隙間があるので麹の菌が侵入しやすく、結果として発酵がスムーズに進みます。
酒米に求められることは、心白をお酒に合わせてつくることと、心白部分を削りだすので、ここが砕けてはいけません。
砕ける理由は主に胴割れですが、胴割れは1%未満に抑えることが求められます。
近年、日本酒の輸出が盛んとなり、超高級なお酒も販売されています。最高級の純米大吟醸酒は、お米を23%まで削るので、そこまで砕けず、かつ心白が確保されることが必要になります。
このため、酒造会社がコンクールを開催し、求める品質の酒米を厳選して調達する時代が始まりました。
最高品質の酒米は、一俵あたり50万円と値段がつけられ、出荷単位は60俵が基本なので、合計出荷3,000万円で買い取られています。
酒米は、収穫すれば良いわけではなく、それなりの品質のものを作るように心がけましょう。
注意点としては、まず登熟を揃えることです。胴割れが出ないように、乾燥調整はゆっくり行います。
また、心白形成に関連した水管理が必要で、早く用水が来なくなるところは避けるほうがよいでしょう。
新しいところでは、育苗時に菌根菌を接種して、登熟期の乾燥に備えるテストも始まっております。
酒米は、藁の重量に対し、お米の収量が少ない品種が多いので、品種特性を確認して藁をしっかり作るようにしましょう。
山田錦などは、草丈が長くなると倒伏への心配から、生育を抑えて栽培する傾向がありますが、藁が少なくなると、翌年以降の収量が激減しますのでご留意ください。