神奈川県相模原市で兼業農家をしていましたが、会社員を退職し、専業農家になりました。
うちの畑はそれぞれ別の農家が所有する崖と崖の間に挟まれています。
以前、大雨が降った影響だと思うのですが、前に比べて崖の上部が水を含み、崩れそうな状況になっています。
崩れそうな部分はおそらく、切盛土だと思うのですが…。
崖崩れを防ぐために、補強工事などをしてほしいと思って、所有者の農家さんに話したところ「いや、大丈夫ですよ」と言われて、何の対策もしてもらえません。
この農家さんは自治会長でもあるので、あとあとのことを考えると、強く言うことができずに困っています。
何か対策を取るよう、市から命令を出してもらったり、市に補強工事をしてもらいたいのですが、どうすればいいのでしょうか。
(神奈川県・鈴木宗人さん/仮名・60代)
神奈川県砂防海岸課
神奈川県砂防海岸課
原則は所有者が行うべきものです。地域や自治会などに相談してみてください
神奈川県の「がけの防災工事を行うには」の事例を踏まえて具体的に解説します。
まず、「崖地の防災工事は、土地の所有者等が行うべき」というのが原則です。基本的に、崖地の状態を県が常に監視したり、「危険になっているから、防災工事を行って下さい」という命令を出すことはありません。
加えて、崖地の防災工事は、多額の費用を要し、技術的にも困難な面があります。すべての地域にあまねく防災工事を行うことは難しいため、県として防災工事を行うのは、「急傾斜地崩壊危険区域」に指定された区域のなかで、工事実施基準を満たす場合に限定されます。
この工事基準として指定されるためには、「がけの防災工事を行うには」にある図を参考にしていただくと、「崖の高さが5メートル以上あり、その崖が崩れると被害を受ける家が5戸以上存在(もしくは5戸未満でも官公署、学校、病院、旅館等に危害が生じる恐れがある)し、さらに崖の傾斜が30度以上ある」という条件を満たす必要があります。
また、工事を実施した後の施設は県の所有物となります。加えて、草刈りや排水溝の清掃等の日常管理は、お住まいの方々や土地の所有者において行っていただくことになります。この点は、所有者ご自身が理解していただくことが必要です。
非常にお困りのこととは存じますが、「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されていない区域や、工事実施基準が満たされていない崖地では、県が工事を行うことはできません。
以上の理由を踏まえ、現状ではご不安と思いますが、個人の申し入れだけで工事を実現させるのは極めて困難です。
土木事務所に現状を知らせた後、ご相談者様・所有者の方もまじえ地域で相談し、自治会長さんなどと一緒に県に相談していくことが、現在の制度でできうる解決策かと存じます。