桃やぶどうなどを中心に山梨県の甲府盆地でフルーツを育てています。
すでに還暦も過ぎ、肉体的にも農作業がキツくなってきました。
とはいえ、おかげさまで大きな病気をすることもなくここまできました。まだまだ仕事を続けていきたいです。
そこで気になっているのが、ロボット農機です。
トラクターの無人走行などは素人でもイメージできますが、果樹向けのロボット農機が開発されていることも耳にしました。
しかもぶどう専用らしいです。
果樹栽培は非常にデリケートです。ロボットが枝を検出し、正確にカットして、しかも作物に傷をつけずに収穫できるというのは本当なのでしょうか?
桃やぶどうなどはさすがに難しいと思っていますが、果樹向けのロボット農機の最新情報を教えてください。
(山梨県・伊藤宗介さん/仮名・60代)
野口伸
北海道大学農学研究院ビークルロボティクス研究室 教授
進化を続けるロボット農機。続々と開発・実用化されています
農業就業者の高齢化により労働力不足が深刻になってきている日本では、「スマート農業」に注目が集まってきています。
本研究室でも「ICT×ロボットで21世紀の農業にイノベーションを」を合言葉に、「ロボット化」とベテラン農家の匠の技をデータ化して活用し、農業にイノベーション(技術革新)を起こすことを目指しています。
ロボット農機の現状ですが、国内農機メーカーから2018年に世界に先駆けてロボットトラクターが市販化されました。
現在は目視監視が必要で、大きな機種しかありません。しかし、近いうちに中型のものも実用化されるでしょう。さらに田植え機のロボットが実用化、ほぼ操作なしで作業してくれるコンバインなど、どんどん省力化が進んでいます。
作物に傷をつけずに収穫できる技術も進化しています。トマト、いちご、アスパラガス、きゅうり、ピーマンなどの収穫ロボットが続々開発、実用化されており、すでにカメラやAI(人工知能)を利用することによって傷をつけないで収穫できる技術は達成されています。
相談者様が手がけているぶどうについては垣根仕立ての醸造用ブドウ栽培を対象にした電動ロボットが北海道大学が中心になって開発中です。
NTTグループやトヨタ自動車とともに開発をすすめていますが、まず草刈・防除・運搬のロボット化です。その次は収穫や剪定ができる知能ロボットの実用化が目標です。
いずれの作業も人と協働するスタイルを考えていますので、安全性の確保が最も重要です。生食用については現状では省力樹形といった機械化を念頭に置いた樹形で栽培いただくことが前提になります。
このブドウ栽培ロボットも販売だけでなくリース、レンタル、請負作業などを考えていますので、規模の小さい農園でも使用いただけるロボットを目指しています。近い将来、相談者さまのニーズに応えられるようなロボット農機が登場することでしょう。
問題は価格です。普及が進めば価格は下がりますが、まだそれは先になるでしょう。
とはいえロボット農機を購入するのではなく、リース・レンタル・シェアリングなどの使用方法が生まれつつあります。
ピーマンやアスパラガスなどの収穫ロボットはまさにリースで使用いただくことを念頭に実用化しています。そうなると金額的負担も少なく利用できるようになります。
今後の農業においてロボットやICTの利活用は不可欠です。我々の研究開発した新技術で皆さまのお力になりたいと思っております。