就農5年目になります。露地栽培で根菜を中心に育てています。できるだけ作業を軽減したいので、大根やにんじんなどの種まきについて教えていただきたいです。
いままで大根はタネを3粒まきして育てています。これは研修先で教わったやり方で、それをずっと守っています。
しかし、この方法は正しいのでしょうか?
種まきした後、発芽してから間引いていくわけですが、だいたいしっかり芽を出します。
かえって間引き選びで迷ったり、作業時間が余計にかかってしまいます。
私にはどうしてもムダな作業に感じられます。
思いきって1粒まきに挑戦しようと考えているのですが、間違っているのでしょうか?
もし実際に1粒まきでやる場合、気をつけることは何かありますか?注意点があったら知りたいです。
(神奈川県・伊藤さん/仮名・20代)
五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
大根の1粒播種は株間を広めに行う。マルチを使い、寒冷紗などで「べたがけ」を
大根の1粒播種は農家さんの労力軽減を図るために開発しました。
すでに20年以上昔のことになりますが、今でも十分に活用できる技術です。
ダイコンの種の性能も良くなり、バラツキが減って、発芽率が100%近くまで向上したことが背景にあります。
開発のきっかけは、神奈川県三浦半島の農家さんの間引きの労力が軽減することを願って、1粒播種を広めようとしました。
しかし当初は、三浦半島のように、面積が比較的小さい農地では、苗が枯れて欠株になってしまったら、収量減に直結するとしてバッシングを受けました。しかし、何年かかけて少しずつ普及するにつれて、好意的に受け止められたようです。
早速、相談者さんの悩みにお答えしましょう。1粒ずつタネをまくためには、事前に株間を決めてシードテープ(シーダーテープとも)に加工してもらうと良いでしょう。
マルチの穴に播種するのでしたら、1粒ずつ手で播種するしかありませんね。
ダイコンでは品種にもよりますが、15cm間隔では狭い気がします。青首ダイコンの場合、20〜25cmくらいが良いと思います。
播種の後は、強風で株が倒されたり、鳥などの被害を防ぐために、寒冷紗や不織布で直接覆う「べたがけ」をします。
そして本葉が出てきて、株がしっかりしてきたら、べたがけは早めに取り除いてください。いつまでもかけておくと、日光を遮って、生育が抑制されてしまうからです。
思い切って1粒まきに挑戦したいが、その考えは間違っているか?というご質問ですが、1粒播種は、省力化に向いている方法ですから、ぜひ挑戦してみてください。
なお、秋まきの際に1粒播種を行うと、3粒播種よりも生育がやや早くなります。
これは発芽から間引き時期までの初期の生育が促進されるからです。
3粒播種だと間引きするまで、お互いの株の葉が重なり合って、光があたりにくくなるなど競合するからだと思われます。
したがって、播種時期が予定よりも遅れてしまったというような場合には、1粒播種は有効な手段です。
種の選び方ですが、購入した種はそのまま使用します。大きさ、ツヤなどを選別するのは現実には不可能です。
冒頭で述べたように、市販の種の発芽率は非常に高いですから問題ないでしょう。穴の間隔についても、上述したように15cmではやや狭いです。ただミニダイコンなら問題ありません。
最後に注意点ですが、マルチを使用せずに露地で栽培する場合は、発芽率は100%ではありません。つまり減収となりますから、そのリスクを労力削減を図りながら、どこまで許容するかということを常に考えておく必要があります。
対処法として株間を5、6cmとした1粒播種を行うといいと思います。発芽後に本葉がしっかりしてきたら、予定の株間になるように間引きするという方法もあります。
従来のように、1箇所に3粒まくよりも、この方法の方がずっと作業は楽になります。同時に欠株のリスクも減らすことができますので、ぜひ試してみてください。