住宅街で父と一緒に畑を営んでいます。私は就農して10年ほどで、父の農作業を手伝いながら納品作業をメインにしています。
農地面積は1ヘクタールほどで、露地栽培で季節の野菜を栽培していますが、父が市の農業委員も務めているので、生産物の6〜7割程度は学校給食で扱ってもらい、残りは直販所で販売しています。
先日、学校給食の担当者から「大根の臭いがキツイと嫌がる子どもが増えてきたので、なんとかならないか」と相談されました。
今までそんな相談をされたことはなかったのですが、最近はそういう子供が増えてきているそうです。
育てているのは青首大根ですが、大根は臭いがあるものだし、黄変したりもします。しかし、生産者として食べてくれる人の意見は大事にしたいと思っています。
そこで、大根の臭いを減らす方法を教えてほしいです。
(東京都・石山さん/仮名・30代)
石田正彦
農研機構 本部事業開発部 地域ハブコーディネーター
大根の臭いの原因となる成分を含まない品種「サラホワイト」が最適です
じつは子どもだけでなく、若年層を中心に大根の惣菜や加工品のにおいを苦手とする方が増えています。
これは、食生活が変化して消費者の嗜好性が変わり、たくあん漬や切り干しといった大根加工品を家庭で食べる機会が減っていることが主な原因と考えられます。
大根特有のにおいである大根臭は加熱すると特に強く感じられることもあり、コンビニやスーパーの弁当にはたくあん漬や切り干し大根が入らなくなりました。
大根臭が発生する理由は、大根にはグルコラファサチンという硫黄を含んだ特有の成分が含まれているからです。
グルコラファサチンは組織が壊れると化学変化して辛み成分に変わります。しかし、この辛み成分は化学的に非常に不安定で、分解されて硫黄臭を発しながらさらに分解反応が進み、時間が経つと黄色成分に変化します。
大根おろしの辛み、たくあん漬や切り干し大根特有のにおいや黄変は、グルコラファサチンが分解されて自然に生じるもので、大根特有のものです。
たくあん漬や切り干し大根に限らず、業務用のおでんの具や大根おろし、サラダ、野菜ジュースといった大根加工品におけるにおいや黄変に関する問題は既存の加工技術では解決できないため、生産者や食品会社などから多くの相談が寄せられていました。
そこでこの問題を解決するため、農研機構はお茶の水女子大学、渡辺農事株式会社と共同でグルコラファサチンを含まないダイコンの研究を進め、品種「サラホワイト」を育成しました。
「サラホワイト」はグルコラファサチンをほとんど含まない冬どりの白首品種です。肉質が硬いことから、大根おろしやツマ、煮大根、切り干し大根に適しています。
また、甘みが強く食味が良いので、サラダにも向いています。もちろん、グルコラファサチンを含みませんので、調理しても大根特有のにおいが生じず、大根臭を苦手とする方々から好評をいただいています。
一度、「サラホワイト」をご検討されてみてはいかがでしょうか。また、「サラホワイト」よりも多収で栽培しやすい「令白」という品種も育成しています。
渡辺農事株式会社
渡辺農事株式会社
「サラホワイト」と「令白」は農地との相性もあるので、少量から栽培してみましょう
弊社では「サラホワイト」と「令白(れいはく)」の2品種の種を販売しております。いずれも、加工してもたくあん臭が少なく、黄変しにくい特性を持ち合わせております。
とくに「サラホワイト」は特許許諾された商品で、肉質は硬くち密で水分が少なく、さらに乾物率が高いため、加工適性に優れている品種です。
まずはこの2品種の栽培をご検討してみてはいかがでしょうか? ただし、これらの品種が土壌の土質に合わない場合もあるかと思います。
商品は20ミリリットルと2デシリットルの2種類があるので、まずは少量から始めてみることをおすすめします。