減農薬で野菜を育て、JAと道の駅の直売所に出荷しています。
私たちの地域でもシカやイノシシ、ハクビシンなどの被害が多発していて、獣害対策には手を焼いています。
中山間地域等直接支払交付金を使って、畑のほぼ全域を取り囲むように電気柵を設置し、メンテナンスも集落のみんなで行っていますが、個々の畑は所有する農家が対応しなくてはいけません。
直売所に出荷している仲間たちは、自費で電気柵やワイヤーメッシュ柵を設置しています。
私も山に近い畑には電気柵を設置していますが、場所によってはシカに倒されたりすることもあり、メンテナンスも大変です。
最近、近くの畑で、ポリエステル製とみられる幅広いピンク色のテープで畑の周りを4段くらいに囲っているのを見かけるようになってきました。
ピンクの色やテープが、風でなびいて出すシャカシャカ音で、シカやイノシシなどが怖がって近寄らないらしいと仲間の間でも話題になっていますが、まだ使っている人はいません。
ピンク色のテープで囲うだけでいいなら一度使ってみようと思っていますが、獣は音や光などに慣れるから次第に効果が薄れるという話を聞いたこともあります。
本当に予防効果があり、その効果は長続きするのでしょうか?
(山梨県・坂本隆子さん/仮名・50代)
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
野生動物のほとんどは色を識別できないので、効果はありません!
少し前までは何もしなくても収穫できたのに、「何か簡単なもので野生動物の侵入を防げるものはないかな?」と思っている方が多いと思います。
侵入防止柵や電気柵などは費用もかかるし、手間もかかるという理由から、簡単にできる対策として音や匂い、色付きテープなど、動物が嫌がるだろうと思われる対策はこれまでも行われてきました。
今回の相談のピンクのテープもそのひとつで、九州を中心に西日本から徐々に北に向かって普及しているため、獣害対策に効果があるかどうか聞かれたこともあります。
でも、この対策は人の目線で考えられたものです。「うるさいから、くさいから、目立つから」はすべて人間の目線です。
野生動物で人間のように色を識別ではきるのはサル以外ありません。
特定の色を識別している可能性はありますが、識別できるだけであって嫌がるわけではありません。したがって、これらの対策で成功した事例はありません。
動物は初めて見る物に対しては警戒します。ビニール紐やバケツだって初めて見たら一時的な侵入防止効果はあります。でも、ほんとうに危険なものではないので持続的な効果は期待できません。
動物は「自分の能力では、ここには絶対入れない」「ここに入ったら自分の体に危険が及ぶ」と考えられる理由以外で侵入を止めることはありません。
そこで、野生動物から田畑を守るには物理的な柵で侵入できなくするか、電気柵で痛みを記憶させるかの2択だと思います。