長野の山間部で、果樹と野菜の観光農園を営んでいる60代です。
私の農園は国有林に囲まれた場所にあり、広さは約3ヘクタールで、平坦地と傾斜地が混在しています。
最近、農園の周辺に、イノシシや猿などの野生動物が昼夜を問わず、人目をはばからず作物を荒らしに出てきて、辟易しています。
観光農園ですので、鉄条網や電撃線といった危険なものはなるべく使用したくないため、動物を追い払うためのアルバイトを雇っています。
しかし、その場を離れるとまた動物が戻って来てしまいますし、お金も馬鹿になりません。
そんな時、思いついたのがドローンの活用です。
搭載したカメラの映像を手元で確認しながら見回りをしたり、音を出して威嚇したりできる機種もあると聞きました。
獣害対策に役立ちそうなドローンの活用法があれば、教えてもらえると助かります。
(長野県・高橋さん/仮名・60代)
古田充生
南榮工業 (株) ジャパンドローンセンター所属(DJI認定 マスター教官・1級整備士)
赤外線カメラや、スピーカー&録音機能付きの機種がおすすめです
農業と鳥獣害は、切っても切り離せない部分が多いですよね。どの自治体さんも困っているという話をよく耳にします。
私が勤める会社では、DJI社製のドローン「M300」と「H20T」を使い、獣害駆除に取り組んでいます。ドローンに搭載した赤外線カメラで、山中にいるイノシシなどを獣害の原因になる動物を発見し、それを地元の猟友会の方々に捕獲したり、駆除してもらっているのです。
そのほか、スピーカーを搭載しているドローンを使う方法もあります。音を出すだけでなく、録音機能もついている機種も多いので、動物が苦手とする音を録音し、スピーカーで流しながらドローンを飛ばせば、害獣対策に効果的だと思います。
DJI社製のものでは「MAVIC 2 ENTERPRISE」という機種が、スピーカーを取り付けるためのアタッチメント機能を装備していますよ。
古谷益朗
野生生物研究所ネイチャーステーション
動物は学習する。「この先に入れない」と学ばせるべき
野生動物は自分の身に危険が迫らない限り、撤退しないもの。
ドローンも最初のうちは、上空に見慣れない物体が来るので「とりあえず逃げておこう」となりますが、何度も繰り返していると「身に危険がない」と学習して慣れてしまいます。
私がお勧めするのは、動物に適したサイズの柵で囲うことです。猪だけなら1m程度の高さの鉄製メッシュ柵で効果がありますが、猿の場合は、1m50㎝以上の高さが必要になります。
ネットと電気柵を組み合わせた複合柵も効果的です。観光農園では難しいと危惧されていますが、多くの観光農園で複合柵を導入していますよ。
重要なのは、動物にこの先は侵入できず、作物を食べることができないと学習させることです。そうすることで出没回数が減り、やがて現れなくなります。複合柵を設置した農園では安心して管理できるようになります。
一方、鉄条網はまったく効果がありません。猿を止めるには、電気で痛みを記憶させることが必要です。それぞれの動物の性質を知って、それに適した技術で対応することが重要です。