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人工乳に興味を示さない哺乳子豚がいます。どうすれば食べてくれますか?

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人工乳に興味を示さない哺乳子豚がいます。どうすれば食べてくれますか?

養豚農家を営んでいます。今、悩んでいるのが、哺乳子豚の餌付けに関する問題です。

スムーズに離乳できるように、分娩舎で餌付け用の人工乳を与えていますが、よく食べる子豚もいれば、人工乳に興味を示さない子豚もいます。

哺乳時の行動を見ると、生まれた時の体重が大きくて強い子豚は、小さくて弱い子豚よりも乳の出が良い乳頭を確保しやすいので、その後の生育に差がつくことがあります。

ところが、なぜ人工乳への嗜好性に違いが出るのかに関しては理由がいまいち分かりません。

どのようにすれば、興味を示さない子豚にも餌付け用人工乳を食べてもらえるでしょうか?
(千葉県・山口一仁さん/仮名・40代)

加藤武市

加藤技術士事務所

子豚が飲めるよう「分割授乳」させたうえで、人工乳に甘味をつけて飲みやすいように工夫しましょう

養豚経営のカギは、生まれたばかりの子豚(初生子豚)が死なないように管理することです。

母豚には子豚にお乳をあげるための乳頭が、ほぼ7組14個あります。母豚の首に近い前側にある乳頭ほど、乳量が出ることから、力の強い子豚は前部に、力の弱い子ほど、母豚のお尻側のおっぱいを飲むことになります。

お乳がより出る乳頭を求める子豚の争いは、生まれた順番とは関係がなく、一般には生まれた時の体重が大きい子豚ほど前部につくとされています。

この「子豚のおっぱい争い」ですが、中間位置の乳頭を吸う子豚は、順位が入れ代わることもあります。

おっぱい争いは生後2~3日でほぼ決定するといわれていますが、力関係はその後の発育にも影響を及ぼします。

豚の出生時の体重とその後の発育に関しては、古いデータですが、愛知県の種畜場の研究員だった宮嶋松一さんが2000年8月号の『養豚の友』で研究成果を発表しています。

研究によると、出生時の体重は平均1.35kg前後になりますが、個体ごとによって少しずつ異なります。体重1kg以下の子豚が生まれる割合も、14.8%と決して少なくありません。

1kg以下で生まれた虚弱な子豚はその後の育成率も良くありません。

体重105kgまで成長した時の育成率を調べたところ、生時体重1.0~1.3kgの子豚の育成率は81.0%、1.4~1.7kgは90.1%、1.8kg以上94.7%と高い反面、1kg未満の虚弱な子豚は、58.3%と極端に悪い成績です。

1.0kg以下の虚弱子豚が生まれる出現率は、生まれる月や産子数、母豚の出産回数によっても差がありますが、産次月が冬だったり、産子数が14頭などと多くなると、生時体重1.0kg以下の子豚が生まれる比率は26%と高くなります。

母豚の出産回数が8回以上になると、生時体重1.0kg以下の子豚が生まれる比率は、さらに25%を占めるようになります。

生時体重と、出産から20日経った離乳時体重の関係をみると、生時体重が0.9kgから大きくなるにつれて、離乳時体重も比例して大きくなり、0.671と高い相関係数が報告されています。

その傾向は、体重105kgまで成長するまでの出荷日齢にも影響を及ぼしています。

一般的に、子豚が105kgまで成長するのにかかる日数は、平均184日齢だとされます。しかし、生時体重が0.9kg、1.0kgの子豚は、出荷するまでに205日齢、191日齢と極端に遅くなります。

これの相関係数は-0.337とかなり低くなります。1.0kg以上で生まれた子豚には、このような違いは見られません。

前段が長くなりましたが、養豚経営において虚弱な子豚をいかにして少なくするかがどれだけ重要かお分かりいただけたかと思います。

「育種改良」「妊娠期および分娩後の子豚の栄養」「飼養管理」の3つが収益アップにつながります、

そこで、初乳を与えるときには、生まれた子豚すべてが飲めるようにする「分割授乳」という方法があります。

先述したように、生まれた子豚の数が多いと、1頭あたりの生時体重は単純に小さくなりますから、体重を増やすために分娩前の母豚へのケアが重要となります。

子豚が生まれてきたら、真っ先に初乳を摂取させるようにします。ご存知だとは思いますが、初乳には母豚から受けつぐ免疫の大部分が含まれていますから、すべての哺乳豚に充分な量の初乳を飲ませなければなりません。

豚の品種改良が進んで、繁殖率が高くなったため、近年は乳房数以上の子豚を生む母豚も珍しくなくなりました。そうなると、体重の小さな虚弱子豚は、大きな子豚にはばまれて、初乳にありつけないケースもままあります。

そこで、小さな子豚を取りこぼさず、すべてに初乳を飲ませる工夫のひとつが「分割授乳」です。具体的には、生後必要な処理が終わり次第、生まれた子豚を大きい順に半分選んで、これを保温箱あるいはプラスティック製の箱の中に閉じ込めて保温します。

残り半分の小さい子豚を母豚の乳房近くに誘導して、初乳を飲むまで確認します。

小さい子豚グループが初乳を十分摂取したのを確認したら、隔離していた大きい子豚グループを解放して、自由に初乳を飲ませるようにします。これが分割授乳の基本です。

ただし、大きい子豚グループを閉じ込めておく時間は、最長でも1時間以内としてください。出産直後の子豚は、水分を補給しないとすぐに脱水状態になりますので、分割授乳は1時間が限度です。

次に、ご相談者さんが懸念している人工乳で哺育する場合の注意点です。

生後3~14日齢の間に、人工乳特A、またはAを与えるのですが、人工乳には早く慣れさせるための技術として、二つ割りにした古タイヤや、古いゴム長靴などのゴム製品に人工乳をつけたものなどを手作りする方法があります(参考:「人工乳による子豚の育成と豚の産肉性に関する研究」)。

これは、豚がゴム製品を好んでなめる習性を利用している工夫です。

また、人工乳に甘味料を若干まぜて与えると、早く味を覚えて餌付けできます。人工乳に混ぜる甘味には糖蜜やブドウ糖、脱脂粉乳やホエーなどがオススメです。

人工哺乳になるのは、生時体重が1kg 以下の虚弱子豚が対象になります。甘みのある市販人工乳を選ぶのもいいでしょう。

市販の人工乳のなかでも、「NTミルク」などの代用乳は、甘味とミルクの香りを添加することで、子豚により好まれる味付けになっています。

JA全農の「ピグリキッド ナチュラル」は人工哺育用の代用乳として0日齢から使用できます。なお、育成率を高めるためには飼槽の管理等、衛生管理の徹底も必要です。

福井県畜産試験場時代は、甘味のある市販の人工乳をたべさせて、初生子豚の食い込みを良くしたことがありました。ご参考になれば幸いです。

引用:宮嶋松一「養豚の友」2000年8月号記事より

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