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露地栽培している柿がカメムシの被害に。予防や対策のアドバイスが欲しいです

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露地栽培している柿がカメムシの被害に。予防や対策のアドバイスが欲しいです

奈良県で「刀根早生(とねわせ)」という渋柿をハウス栽培で育てております。ハウス柿を作り始めてから40年ほどで、試行錯誤を繰り返しながらここまできました。

現在は後を継いでくれる予定の息子夫婦と一緒に仕事をしております。

昨年、息子が柿狩りで柿の魅力を多くの人に伝えたいと言い出し、実験的に「富有柿(ふゆうがき)」を、プランターや鉢植えではなく、直接地面に植える「露地植え」で育てることにしました。

ハウス柿と路地柿では収穫の時期はタイミングよくズレていますし、私も柿作りのベテランと自負しています。大きな負担もなく育てることができると確信しておりました。

しかし、これは大きな油断でした。昨年はカメムシの大発生で、かなりの被害が出てしまいました。原因はハウス柿の収穫時期とカメムシ対策の薬剤散布の時期が重なってしまい(6月下旬以降)、薬剤散布が疎かになったせいだと考えられます。

繁忙期に収穫と薬剤散布が重なると、どうしても負担になってしまいます。

うまく作業時期をズラしながら予防する方法や対策がないかと思案中です。ぜひ知恵をお貸しください。
(奈良県・中村光士さん/仮名・60代)

石川 忠

東京農業大学農学部 昆虫学研究室 教授

柿をカメムシから守るためには、発生情報を病害虫防除所やJAから入手し、根気よく防除を

私は昆虫、とくにカメムシ類を研究対象としております。専門は分類学という分野で、新種の発見・発表や種多様性(カメムシの種がどれほどいるか)の解明を研究しています。カメムシ駆除の専門家ではありませんことをご承知ください。

害虫対策を行うには、各地域の病害虫防除所に相談することが最善の方法です。なぜならば害虫には地域特性があるからです。つまり、同じ害虫でも地域によって発生時期や発生量が異なります。

病害虫防除所は長年をかけて蓄積してきた害虫の情報(データ)を持っています。病害虫防除所は農林水産省の管轄です。

この2点をご承知いただいたうえで、該当するであろうカメムシの性質などを簡単にご紹介します。

柿に被害を及ぼすカメムシは、主にチャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシの3種類と考えられます。

これらのカメムシは普段は樹上生活(山の中でスギやヒノキの花粉を餌にして生息)をしています。幼虫は柿を食べません。チャバネアオの幼虫は柿を食べますが、老齢幼虫は食べません。

どのカメムシも光に強く惹かれて移動してくる「走光性(青色蛍光灯・水銀灯)」の性質を持っています。また、チャバネアオとツヤアオは集合性(フェロモン)があります。

これらのカメムシは7月から10月ごろまで柿を摂食します。果実がまだ青く未熟な時期から吸着しますので、防除対策をする期間がどうしても長くなります。また、台風など強い風が吹くと山林の木々が揺さぶられて、人里に大挙して飛んできて大きな被害を及ぼします。

防除のための薬剤散布の時期は重要です。タイミングを逃すと効果が得られません。各地のJAでは果樹農家向けに「防虫暦」とか「防除暦」を作って、殺虫剤を散布する適切な時期を知らせていますので参考にしてください。

地域によっては農家さんの協力で誘引灯に集まった害虫の数をモニタリング調査し、飛来状況をリアルタイムで知らせる「果樹カメムシ情報の配信サービス」を行っています。

こうした情報をもとにして、スピードスプレーヤーなどの薬剤噴霧機で殺虫剤を散布することになります。使用する農薬は最新情報を確認し、用法を守った上で、病害虫防除所の指導にのっとって利用するのがいいでしょう。

農薬の使用以外で有効な防除法は、走光性と集合性(フェロモン)という性質を利用した方法です。走光性を利用した方法は、青色蛍光灯や水銀灯を水を張ったタライ等の上に設置します。

そして、光に惹かれてきたカメムシを溺死させます。水には少量の中性洗剤を入れておくと表面張力をなくす効果あるので溺死させやすいです。

集合性(フェロモン)を利用する方法は、合成フェロモンを使って誘引できれば一番よいのですが、忌避剤はあっても誘引剤はおそらく市販はされていないと思われます。

そこで、代替として生きたカメムシを使います。夜間灯火で飛来したカメムシをネットやカゴなどに数十個体入れ、水を張ったタライの上にぶら下げておくと、オスの出すフェロモンに誘引されます。場合によっては一晩で何千個体ものカメムシが捕獲されることもあります。

カメムシは年によって発生量が異なります。8月で世代交代しますが、発生数の増減のメカニズムは解明されていません。

餌となる球果(松ぼっくりのような針葉樹がつくる果実)の数に影響を受けるとか、大雪が降った翌年は大発生するなどといわれていますが、明確な科学的根拠はありません。

繁忙期に収穫と薬剤散布が重なってしまうと大変でしょうが、カメムシは根気よく防除対策をするしかありません。地域の情報をうまく活用することから始めてください。

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