柿農家を山陰地方で営んでいるものです。80アールの圃場で複数の品種の柿を栽培しているのですが、最近「ジョイント栽培」に興味を持っています。
梨栽培では、隣接する果樹をつなげる「ジョイント栽培」ですぐに収穫量が上がり、作業負担も軽くなったと聞きました。
しかも、私はぎっくり腰をやってから腰を痛めやすくなっているので、着果位置が低くなると脚立での作業も必要なくなる点は非常に魅力に感じています!
ジョイント栽培は柿で導入しても、梨と同じような効果が見込めるのでしょうか?
(島根県・山内慎之介さん/仮名・60代)
清水太一
フィールドワーク株式会社(大磯うみのかぜファーム)代表取締役
ジョイント栽培のメリットとデメリットを紹介します
「ジョイント栽培」というのは、苗木と苗木を、接ぎ木の技術を利用して接続する農法です。早期成園化と省力、軽労化が期待されています。
梨で開発された農法ですが、今ではリンゴ、ぶどう、柿、梅など様々な果樹にも適応できることが確認されています。
「ジョイント栽培」の導入メリットは4つあります。詳しい資料がインターネットでも公開されていますので、参考にしていただきつつご覧ください。
ひとつめは「早期成園化」です。昔から一般的に、結実に時間を要する例えとしても「桃栗三年柿八年」といわれますが、柿の場合、定植3年目で約2トン/10アールの収量が確認されています。
ふたつめは「労働時間の削減と省力化」です。作業動線が直線的になり、単純化できます。
また、樹高が低くなるため脚立が不要になります。脚立を上り下りする必要がなくなるため、摘果や収穫等の作業時間を約半分に減らせます。
みっつめは「作業の簡易化」です。熟練技術が必要な作業も減らすことができます。
例えば、剪定は特に熟練技術が必要な作業のひとつですが、ジョイント栽培であれば、慣行栽培と比べて簡易です。その結果、さほど慣れていない人にでも作業をお願いしやすくなります。
四つめは「安全性」です。樹高が低くなることで高所での作業も発生せず、落下事故が減らせます。この点でも、危険性が少なくなるため安心して他の人に作業をお願いできます。
デメリットについても3点説明します。
ひとつめは「初期コスト」です。これまでの栽培方法と比較すると、苗木代や棚整備費などで初期コストがかかります。
例えば、ジョイント栽培導入にあたって必要な苗木は、1反あたり300本程度です。
ふたつめは「長期的な収量のデータがまだない」ことです。新しい技術のため、期待される収量が長期的に確保できるかどうかはまだ分かっていません。
当方で柿のジョイント栽培で10年程度経過した圃場に聞き取りしたところ、収量は減っていないことが確認できました。10年間での収益性を計算したうえで、導入可能と判断しました。
みっつめは「低樹高化」です。晩霜害や獣害を受けやすくなるといわれています。また、適用する作物によっては、特許の実施許諾に関する契約が必要ですので、確認してみてください。
JAしまね出雲地区本部 東部ブロック東部営農センター
JAしまね出雲地区本部 東部ブロック東部営農センター
まだ自信を持ってすすめられませんが、良いところも悪いところもあります
ジョイント栽培については試験的に取り組んでいる生産者がほとんどで、まだ産地全体として、自信をもってすすめられる段階ではありません。
柿のジョイント栽培のメリットとデメリットを簡単にまとめてみました。
メリットは
・樹高、樹勢、枝の管理等の作業が、従来の栽培方法と比較すると楽
・樹高が抑えられるため作業に脚立がいらない
・樹形が一列並びになるので、作業がしやすい
・日当りや風通しがよく、品質が良い
です。
デメリットは
・樹高が低いため、霜害を受けやすい
・風で葉が傷みやすい
・植栽本数が多く苗代がかかる(苗もジョイント栽培用の長い苗が必要になります)
・支柱等の資材が必要になる
です。
参考にしてみてください。