京都でイチジク栽培をしている者です。露地で10aほど作付しています。
親父の代から蓬莱柿(ほうらいし)と呼ばれる日本中どこでもなっているような品種を栽培してきましたが、最近は需要の高い、洋種にもチャレンジしたいと思っています。
例えば、黒イチジク(ビオレソリエス)などを検討しています。
しかし、私の住む町は非常に寒く、洋種のいちじくが寒さに耐えられるかが心配です。
冬は氷点下を下回る日も少なくはありません。
ちなみに蓬莱柿はまったく問題なく何十年も実をつけてくれています。
寒冷地でのイチジク栽培のコツを教えてください。
(京都府・松村さん/仮名・50代)
JA紀の里・営農センター 営農部
JA紀の里・営農センター 営農部
蓬莱柿に比べて耐凍性が低い桝井ドーフィンの寒さ対策をご紹介します
JA紀の里の管轄で中心的に栽培している「桝井ドーフィン」の寒さ対策などについてお伝えします。
桝井ドーフィンは蓬莱柿(ほうらいし)に比べて耐凍性が低い品種ですので、参考になるのではないでしょうか。
まず樹形についてです。
和歌山県では作業効率のいい「一文字整枝」がほとんどです。
他にも樹形は「開心形」「盃状形」「x字型整枝」などがありますが、ほとんどしていません。
「一文字整枝」は樹高が低めで、結果枝(けっかし)の配列も一定方向、剪定などもやりやすく、パートさんにも細かい指示が不要で作業をお願いしやすいなどが大きなメリットです。
生産量が多い愛知県などでも同様の理由で多くの農家さんが取り入れているはずです。
西日本の多くはその傾向ですので、ご相談者様も「一文字整枝」を取り入れていらっしゃるのではないでしょうか。
「一文字整枝」の場合の寒さ対策は、藁(わら)や防霜シート、アルミ蒸着フィルムなどで水平に伸びる主枝を覆うようにします。
また、農地内に冷気が停滞するような障害物がある場合は気をつけてください。
つぎに配慮してもらいたいのが、剪定のタイミングです。
凍寒害の発生が懸念される地域では、厳寒期が過ぎてから剪定を行うのが基本です。
その年の天候によって変わりますが(積算温度で異なる)、こちらでは基本的には3月末までは行いません。
とはいえ、剪定時期のタイミングが遅くなると、切り口から樹液が流出して発芽が遅れてしまいます。
ですので、樹液の流動開始前には終わらせるようにしてください。
基本的なことですが、剪定の際には芽の直上部では切らないこと。
上位節の中間(節間)や上位節の芽の位置で切る(犠牲芽剪定)ようにしないと、発芽不良を引き起こしてしまいます。
最悪、芽の枯死(こし)にもつながります。こういった障害は若木に多くみられますので、気をつけてください。
「一文字整枝」ではなく、「開心形」にして主枝を立てていくのも寒さ対策にはなりますが、樹形を変えるのは大変でしょう。
また、「開心形」の場合でも何もしないでいいわけではありません。やはり主枝を藁などで巻きつけた寒さ対策が必要です。
長野県などでは霜対策として加温ハウスで栽培している例もあるようです。
施設栽培は夏期間の生産量増量、生育促進による熟期の早まり、露地栽培より肥大が優れる傾向、安定供給、年間の労力も分散されるといったメリットがあります。
どうしても寒さが気になるようでしたら、寒さに強い品種を選択するしかありません。
いちじくの北限は福島、宮城、新潟あたり、そして秋田では「北限イチジク」をアピールしているようです。
品種は「ブルンスウィック」や「ホワイトゼノア」が中心です。
蓬莱柿は積算温度が足りないので、育てている人はほとんどいないと聞きます。
また樹形は盃状形が多く、のびのび育っているようです。
ただ寒冷地のいちじくは生食ではなく、甘露煮にすることがほとんどです。
秋田県では生食用としてバナーネの栽培をするようになったという話もあるようですが、その辺は試行錯誤の途中かもしれません。