梨を生産し、自宅の直売所で売っています。
果実はトレイに入れて販売していますが、2023年は猛暑が遅くまで続いたこともあって、陳列した梨の日持ちが悪く、特に「幸水」は"腐れ"が出ることがありました。
以前、知り合いのみかん農家さんから、午前中よりも午後に収穫した方が、腐る果実が少なくて済んだという話を聞いたことがあります。
私の場合、自宅店頭で販売するため、これまで梨の収穫は午前中の早い時間帯がほとんどでした。
梨の場合でも、みかんのように、収穫する時間帯によって果実の日持ちが違ってくるということはあるのでしょうか?
(神奈川県・石川英智さん/仮名・50代)
橋本哲弥
橋本梨園
暑い日中に収穫すると果実は熱を帯びて呼吸が促進され、糖分や水分を失いやすくなり、日持ちが悪くなります
農業・園芸専門のライターをしながら、千葉県白井市で橋本梨園を経営しております。
ナシの果実は一般的に、朝の気温が比較的低い時間帯に収穫したほうが日持ちはよくなります。
質問者さんは、日が高く昇ったうだるような暑さのなかで果実を収穫したことがあるでしょうか。
そのような時間帯に収穫した果実は、手にするとホカホカと熱を帯びています。
この熱はすぐに冷めず、日陰の作業場で選果・箱詰めする際に触っても温かいほどです。
反対に、早朝の涼しい時間に収穫した果実はずっとひんやりしています。当然冷えているもののほうが長持ちしますよね。
市場に出荷しても、直売にしても、流通するうえで日持ちの良さは有利になります。
ナシの果実は収穫した後も呼吸をしています。
果実が温かければ、呼吸が促進され、果実内の糖分や水分を消耗してしまうため、当然日持ちは悪くなり、同時に甘味や食味なども損なわれます。
近年は温暖化の影響で、関東でも最高気温が40℃に迫る酷暑日が続く場合があります。
たとえ朝採りでも、従来の基準(果皮色)で収穫をして、日持ちが悪くなっている実感があります。
庭先販売ならまだしも、市場出荷や宅配便での産直の場合は輸送中の劣化が問題になり始めています。
やや青い果皮色での収穫を心がける、灌水の頻度を上げる、鮮度効果が高いとされる「1-メチルシクロプロペン(1-MCP※)」や冷蔵便の利用、直売所の冷房設置など、収穫・販売・出荷など夏の作業においては全体的に高温対策を検討したほうがいいかもしれません。
参照:「リンゴ果実のエチレン生成量が1-MCPによる鮮度保持効果を左右する」