牡蠣の養殖をやっています。最近、仲間内でシングルシード式の養殖が話題に上がります。
私たちがやっているような、ホタテの貝殻に牡蠣の種をつけるのではなく、専用のバスケットカゴに稚苗を入れ、放し飼いのような状態で育てるので、手間がかからずに作業時間も短縮できるのではないかと思います。
バスケットの中で牡蠣たちがぶつかりあうので、成長が早くおいしい牡蠣になるそうです。また、波に揺られながら育つので、販売する際も宣伝に使えるのではないかと思っています。
新しく大規模な施設をつくる必要もなく、イカダに吊るす方法でもできるそうなので、投資しなくでもできそうです。
シングルシード式に変更しようと考えていますが、メリットとコストについて、もう少し詳しく知っておきたいです。
(岩手県・菊池和也さん/仮名・30代)
詫間漁業協同組合
詫間漁業協同組合
シングルシード式のメリットとデメリットを考慮して導入の検討を!
私たちの地域では昔ながらのイカダに吊るす方式で牡蠣を養殖しています。
イカダは主に竹を組んで作っており、圧力が集中するところには強化FRP(金属パルプや木材に比べて、軽量で作業性に優れ、錆びや腐食がなくて耐久性に優れている資材)を使用しています。
イカダの浮力を得るために、発泡スチロールのようなものをカバーに入れた浮きを付けています。
イカダには二本のロープをよって作ったロープに、牡蠣の稚貝の付いたホタテの貝殻を挟み込んで吊るします。
毎年牡蠣の季節が終わったころにイカダの補修を行い、3~5年に一度、大規模に修繕あるいは作り替えをしています。
お問い合わせのシングルシード方式ですが、牡蠣をカゴに入れて、1個ずつバラバラに養殖する方法ですが、プランクトンがむらなく牡蠣に回るため、牡蠣の生育が安定し、歩留まりがよいといわれています。
また、バスケットの中で育てるので、フジツボなどの不要物の付着も抑制することができ、水揚げの際に牡蠣殻がきれいな状態なので、殻を掃除する必要がないようです。
こうしたメリットもあるシングルシード方式ですが、上記のような私たちの方式に比べると、まずは初期投資がかかります。
また、生産期間中に人の手で大きさ選別をしたり、バスケットの位置を変更したりと通常の生産よりも手間がかかり、しかもバスケットのメンテナンスなどの必要もあるようです。
こうしたデメリットも考慮に入れた上で、導入について検討されてみてはいかがでしょうか。