定置網漁のメリットが知りたい

定置網漁は燃料代が安く済み、環境負荷も低いことから、世界的にも高く評価されている漁法です

定置網漁の特徴と利点

漁具を定置（固定）して行う漁業のことを「定置網漁」と言い、大半の定置網は、陸から数百m～5kmほど離れた場所に設置します。

日本の漁業法では、水深27m以上の海域に設置されるものを「大型定置網」、27m未満の海域に設置されるものを「小型定置網」と定義しています。

定置網漁は漁師にとってさまざまメリットがある漁法です。

始めやすい

規模や狙う魚種にもよりますが、定置網漁は小規模で行うことが可能です。

また、数名の船員で連携をとりながら漁を行うため、不慣れな漁師でも、ベテランにサポートしてもらえるというメリットもあります。

また、「待ちの漁業」とも言われる定置網漁は、網を引き上げる「網起こし」を行い、新たな網を仕掛けた後は漁港に帰り、魚の選別や網や船の掃除などを行います。

作業が長引かなければ、午後から自由時間になる日も多く、自分の時間を確保しながら働くことが可能です。

燃料代が安い

遠洋漁業と異なり、陸から数百m～5km以内の沿岸部に設置されるため、漁場までが近く燃料代が安く済みます。

また、底引き網漁などは船を動かすことで魚を獲るのに対し、定置網漁は動いている魚を網に誘い込むため、消費燃料が少なく、燃料代が安く済みます。

環境への影響が少ない

定置網漁は「獲りたい魚種と大きさを選べる」ため海に与える影響が少ない漁法と呼ばれています。

網目を大きくすることで成長しきっていない小さな魚は網を通り抜けさせ、成長した大きな魚だけを網に残して漁獲することが可能です。

最近の研究では、時間帯により網に入ってくる魚群の魚種が異なることもわかっています。

将来的には、網の入り口の開け閉めをコントロールすることで、漁獲する魚種も選ぶことができるかもしれません。

定置網漁と環境の関係についてはこちらもご覧ください
「定置網が「環境に良い漁業」だと言われるのはなぜですか？」

観光資源になる

定置網は陸から数百m～5kmほどのところに設置することが多く、沿岸部の小高い丘などから海を眺めると、浮き（ブイ）が並んで浮いている様子が見えます。

最近では、そういった定置網を設置している海の様子が絶景として撮影されたり、定置網漁船に乗せてもらう観光ツアーがあったりと、地域の観光資源にもなっています。

日本から世界に広がる定置網漁

定置網漁は日本独自に改良が重ねられてきた漁法で、2002年にはブリの定置網漁が有名な富山県氷見市で世界定置網サミットが開催されました。

氷見市から始まった定置網技術を世界に発信しようという動きは、東南アジアをはじめ、世界各国に広まりつつあります。

また、漁獲量への規制が未成熟な国々において持続可能な定置網漁が広まると、漁業の未来を変えていくことにつながるかもしれません。