みかん農家をやっています。圃場は急傾斜の山に張り付くようにあり、みかんの樹も3メートルほどの高さがあります。
最近は歳をとってきたこともあって、急傾斜の上り下りだけでなく、脚立に登っての収穫作業が段々と辛く、危険にも感じるようになってきました。
できれば、みかんの樹高を2メートル強くらいに低くして、脚立なしで楽に収穫できるようにしたいと思っています。
低樹化にするには剪定によって主枝を切り下げる方法が思いつきますが、一気にやると果実の収量減になります。
収量や品質をある程度維持しながら、少しずつ低樹化する方法はありますか。
(熊本県・中村一太さん/仮名・60代)
前田隆昭
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授
みかんを低樹高するには主枝の切り戻しとわい性台木の2つの方法があります
南九州大学で、パパイヤやバナナ、アボカドなど熱帯果樹を中心とした栽培技術を研究しておりますが、和歌山県の農林水産総合技術センター職員時代は、ウンシュウミカンの栽培指導に携わってきました。
ご相談者さんは、ウンシュウミカンの「低樹高栽培」を望まれているようですが、この方法は、最近の果樹栽培の人気でもあるので、ぜひとも取り組んでいただきたいものです。
さて、果樹類を低樹高にするためには、一般的に「主枝の切り戻し」と「わい性台木」を用いた栽培が考えられます。また、落葉果樹類では、棚栽培も行われていますが、ミカンのような常緑果樹類では棚栽培は行われていません。
ご相談内容を拝見しますと、現在3m程度の樹高ということですので、2~3年かけて主枝を切り戻し、樹高を下げていくのが良いかと思います。
ご相談者さんは、ウンシュウミカンを栽培されているので、ご理解いただけるかと思いますが、1年で一気に、主枝を切り戻してしまうと、強い徒長枝が発生し、すぐに元の樹高に戻ってしまいます。
したがって、時間がかかりますが、数年かけて徐々に主枝を切り戻し、樹の内部に新梢を発生させながら、樹高を2.5m程度まで下げていく方法はいかがでしょうか?この程度の切り戻しであれば、大きな収量減にはならないと考えます。
次に台木の話ですが、カンキツ類の台木は、昔はユズ台などを使用しており、大きい樹が一般的でした。しかし、昭和に入るとカラタチ台が普及してきて、昔に比べるとかなりわい化栽培になりました。
現在のカンキツ類(ウンシュウミカン含む)の台木は、ほとんどがカラタチ台となっています。しかし、ご相談内容にあるとおり、ユズ台と比較すれば樹は小さくなるものの、カラタチ台でも樹高はまだまだ大きく、作業しにくいです。
しかし、最近では、カンキツ類に飛竜(ヒリュウ)台を用いた苗木もあり、一般的にカラタチ台よりも低樹高となるので作業がしやすくなっています。
ただし、樹高が小さくなる分、1本の樹当たりの収量が減少しますので、カラタチ台の時よりも苗木と苗木の距離が近い密植栽培をおすすめします。密植栽培することによって、農園全体で考えると、収量は変わらなくなります。
飛竜台木の栽植距離は、カラタチ台木の70%程度という間隔でよろしいかと思います。
例えば、カラタチ台木を使用した早生ウンシュウなら4m間隔、晩生品種なら5m間隔で定植するとすると、飛竜台木を用いると早生品種で2.8m(約3m)間隔、晩生品種なら3.5m間隔でよろしいかと思います。
ただし、台木を変えるとなると、苗木を定植するところから始めなくてはいけませんので、収益を得られるまで時間がかかります。
したがって、収益性の面から考えると、「整枝せん定」による主枝の切り戻しを望まれるかと思います。
以上、私が思い当たる点をいくつか書かせて頂きましたが、現場の状況を把握できておりませんので、的外れなことを書いている場合も多々あるかと思います。その際はご容赦下さい。ご相談者さんの方で、何か参考になるところがありましたら、取り組んで頂けますと幸いです。
上記の回答につきまして、何かご不明な点がありましたら、遠慮なさらずご連絡下さい。
以上、よろしくお願い致します。