愛知県東部で、大葉、セロリ、ミニトマトなどを夫婦で栽培しています。農家になる前は会社員をしていましたが、親族のハウスを引き継ぎ、4年前に就農しました。
肥料の与え方や日当たり、土壌の乾燥にも気をつけていますが、大葉の香りが以前より弱くなっている気がします。
妻や子供は「特にそんな風には感じない」と言いますし、私の嗅覚の衰えという面もあると思うのですが…。
客観的に「香りの強さ」を知る必要性を感じています。手軽に取り入れられる、作物の香りを計る機械や装置はありますか?
(愛知県・田上さん/仮名・40代)
青木泰士
株式会社ATAGO 営業部、野菜ソムリエ
大葉の匂いを直接計測できるツールはありませんが、糖度計を使って調べる方法があります
弊社は、光の屈折を利用して、食べ物に含まれる糖度や塩分、酸度、phを計測する装置を開発・販売しています。
農家さんには糖度計でおなじみのメーカーかもしれませんが、残念ながら、「匂い」を計測する装置は作っておりません。
世の中には、ゴミ処理場やペットの匂いなど、「臭いものの匂いを計測する」目的・機能を持ったお手軽なセンサーは存在します。
そして食品など、より繊細な匂いの度合いを知りたい場合は、食品会社が研究室で使うような、精密な分析機や試薬などのキットが必要になります。
ただ、工夫をすれば、一般的な糖度計でも定量的な計測が可能だと思います。
糖度計を利用した匂いの計測方法は、以下のようなものです。
大葉の匂いは「ペリルアルデヒド」という成分で、これは液体に溶ける性質があります。そういった、液体に溶ける可溶性の固形分がどのくらい含まれているかを、ざっくり計測するというやり方です。
糖度計というと、トマトやイチゴがどれくらい甘いかを計測する装置だと認知されていますが、計測した糖度の値には、糖分以外で水に溶け込んでいる「リコピン」や「クエン酸」などの物質が含まれます。
例えばトマトだと、糖度を計測することで、「水以外に含まれる物質や成分」が分かりますから、水っぽい固体かどうかを知ることができます。
大葉の場合も同様に、すりつぶした液体を糖度計で計ってみてください。その大葉汁が」濃いか薄いかで、「水以外に含まれる物質や成分」の量や割合を知ることができるのです。
相談者さんが大葉の糖度の基準を作って、定期的に搾り汁を計測することで、「いつもより水っぽい」「いつも通りの値」といったように、定量的な観察ができると思います。