4年前に愛媛県の島に夫婦で移住しました。縁があり、高齢だった園主さんの1ヘクタールほどの畑をそのまま引き継ぐ形でレモン栽培を始めました。
品種はリスボンが8割程度で、残りはユーレカです。
ありがたいことに国産レモンに対する消費者人気も手伝って、インターネットでの直販も軌道に乗り、都市部の飲食店との取引も年々増えつつあります。
斜面での作業はそうとうな体力を使いますが、そこはある程度は覚悟していました。しかし、想定外に手ごわく毎年苦労しているのは、収穫時のトゲ対策です。
肘まで覆うタイプの市販の収穫用革手袋を装着し、収穫バサミで慎重に作業しているつもりでも、毎年いつの間にかケガをしてしまっています。
また、トゲが果実を傷つけないよう気を配る必要もあって、非常に神経を使って疲れます。
レモンのトゲ対策について、収穫時の手袋のほかにできることがあれば知りたいです。
(愛媛県・山口真悟さん・由美子さん/仮名・40代)
錦織 慎
Damon de Farm〜熱海ダモンデファーム〜農園長
品種を変えたり、販売戦略を練り直してみてはいかがでしょうか
まず、トゲがそれほどまで気になるのなら、そもそもレモン栽培と相性が悪いと思いますので、レモンではなく他の柑橘類に切り替えるのがベターではないでしょうか?
相談者さんがレモンにこだわる必要がそもそもあるのか、あるのならレモンの品種を変えることが産地的、販売的観点で可能かどうかを検討してみてください。これまで育ててきた品種の太い枝に、新品種を接木する「高接(たかつぎ)」によって、品種を切り返るのが良いのではないかと感じました。
レモンの品種は30種類以上ありますから、相談者さんのストレスが軽減できる品種への変更、適地での栽培方法の検討、販路の確保の点など、総合的に考えてみることをおすすめします。
まずは品種についてですが、原種寄りの「リスボン」や「ユーレカ品種」に近いほど香りは豊かですが、トゲと樹勢は強くなります。そこで、トゲの弱い品種に更新するか、地道にトゲを切ってください。
栽培方法については、まず露地なら槇(マキ)や榊(サカキ)で防風林を作って、物理的に風に当たるのを防ぐことが考えられます。
ただしこちらは時間がかかるので、もし予算があれば、単管パイプを打って防風ネットで囲うのも視野に入れてみてはどうでしょうか?
ビニールハウスで囲って、コンパクトに栽培するのもおすすめです。水源の有無や、水道を引けるかどうかは別途確認する必要があります。
レモンは、その豊産性と樹勢の性質上、みかんのように成らすと、キズだらけになりやすい植物です。
枝がどんどん伸びる樹勢を生かして、先端に成った果実の重さで枝が外側に垂れ下がる性質を活用します。
収穫の翌年には、果実の重さで垂れ下がった状態の水平に伸びる枝を切るようにすることで、樹を広く展開させていくと、キズも抑えられ、病気も発生しにくくなるので、ベターです。ただ、この「切り上げ剪定法」自体、一般的なやり方ではなく、イレギュラーなので、注意が必要です。
また、レモンは「キズがあると売れない」というのは大きな間違いですので、販売面での戦略を見直すなど、打つ手は無数に考えられます。