米農家を経営しています。2年ほど前に家業を継承して農家になりましたが、知識や経験不足を補うために毎日奮闘中です。
しかし、現在悩んでいることがあります。年によって違いがあるものの、8月ごろでも長雨で日照不足になってしまうことがあり、受粉をしていない稲も多いのです。
外見は立派な穂ができているように見えても、内側を確認してみると、もみの中に米が実っておらず(仮に実っていても小さい)、収穫量に大きな影響を与えています。
ほかの米農家さんは、このような日照不足にどう対処しているのでしょうか。良い対策方法があればぜひお教えください。
(宮崎県・吉岡茂樹さん/仮名・40代)
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
日照不足ではなく、風による影響が考えられます
ご質問が日照不足に特定されていらっしゃることに、やや疑問を持っております。
宮崎県にお住まいということは、比較的、日照時間が長い地域だと思うからです。
仮に日照不足が原因であるなら、天候の良いときに開花して受粉します。
また、光合成ができないくらい日照不足が深刻な場合、炭水化物ができなくなります。
稲わらはセルロースが主原料で、これは炭水化物でできています。
光合成の不良なら、土壌分析をしてマグネシウム等の成分の含有量をチェックする必要があるかもしれません。
ちなみに土壌中に水溶性炭水化物が豊富にあると、日照不足でも影響が小さくて済む場合があります。
以上のことから、もみの中に米が実らないというご相談について、私の考えを述べますと、風が原因だとは考えられないでしょうか?
九州は例年、台風の接近が多く、たとえ上陸せずに、遠くを通過する場合でも、開花時に強風に吹きさらされると、不稔または稔実不良(ねんじつふりょう)となります。
また、高温多湿な環境の場合、紋枯病の感染を疑いましょう。
かつて技術指導にあたった滋賀県の水田で起こった収穫米の外観品質低下は、当初は登熟期の気温が高すぎて、品質が低下する高温登熟障害を疑いましたが、詳しく調べてみた結果、紋枯病が原因であることがわかりました。
病斑が穂首まで上がると米は明らかに細くなります。
愛知県でとれるお米で、外観品質が悪いものができる場合が多いのですが、これも太平洋側からの強風と紋枯病によると考えています。
小島英幹
株式会社セイコーステラ エコロジア事業部/日本大学生物資源科学部 研究員
除草などで一株一株にしっかり日照が当たるようにしましょう
イネの栄養生長期に日照時間が少ないと、炭水化物生産が減って、炭水化物に対するたんぱく質含量比率が上がり、いもち病を助長する原因となります。
日照不足がわかってから対策しても、もう手遅れなので、日照不足になっても困らないように、あらかじめ対策(準備)しておきましょう。
株と株の間を広くとることや、しっかり除草をしておけば、日照不足でも一株一株に日光が当たるようになります。
また、日照が少ないと徒長の原因になります。
肥料が多いと、徒長や倒伏の原因にもつながってしまいます。
つまり、日照不足のうえに肥料が多くなると、徒長が増えて、倒伏が相次いで起こります。
山や木の影に入っていて、日射量が少ない水田の場合は、減肥することである程度は対策が可能です。
また、土づくりのときに、堆肥などの有機物を入れると、団粒構造を形成し、土の物理性が改善されるので、保水性・通気性・排水性が良くなります。稲は日減水深20〜30センチが望ましいとされています。
このとき、地力を回復させるためにおすすめしたいのが、牛糞の堆肥を含んだ腐植酸資材「地力の素カナディアンフミン」です。
粒のサイズが選べますし、ペレット状のものであれば、直径4mm、長さは2〜5mmなので、取り扱いも簡単で、土壌のなかで緩やかに分解していきますので、ご検討いただければ幸いです。