鹿児島県の北部で、農業法人を営んでいる40代です。
水田とは別に、ネギを10haの農地で育てながら、10月から6月まで出荷しているのですが、連作障害を防ぐために試行錯誤しています。
ネギの収穫後には、緑肥に使うためのえん麦や「ソイルクリーン」などを栽培し、それらは「フレールモア」という小型トラクターで裁断して土壌に加えながら耕しています。
緑肥を土壌に加えて耕した後に、ネギを植え付けるという作業を繰り返していますが、最近、収穫量が落ちており「緑肥だけでは効果がなくなってきたとじゃろうか…」「どうすりゃよかじゃろう」と悩んでいます。
同じ作物の栽培を繰り返している連作障害だと思うのですが、他のネギ農家さんはどんな対策をしていらっしゃいますか?
緑肥を使わない方法で、連作障害を防ぐ方法を教えてもらいたいです。
(鹿児島県・西川さん/仮名・40代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
サブソイラーで硬盤層と心土を混ぜましょう。病原菌が原因なら輪作してみては
収穫量が低下してきた原因は正確には分かりませんが、土の下に「硬盤層(こうばんそう)」ができてしまったのではないでしょうか。農地は大まかにいうと、簡単に作付けできる「作土層」、その下に「硬盤層」、さらにその下に「心土」という層で分かれています。
硬盤層は硬い土壌のため、ネギの根の伸び方が制限され、土壌中の養分を吸収しづらくなっている可能性があります。
そのため、心土破砕機の「サブソイラー」あるいは「プラソイラ」で、硬盤層の下の心土まで掘り混ぜれば、作土できる深度が深くなり、根の張りもよくなります。加えて、表面の層の土に多く生育する病原菌の密度が、下層の土と混ざり薄まるため、生育の改善も期待できます。
病原菌や植物寄生性センチュウが、連作障害の原因となっている可能性もあります。その場合、もっとも効果的な対策は、同じ土地でいくつかの作物を順番に作る輪作(りんさく)です。
連作障害の原因となる病原菌や植物寄生性センチュウは、好気性といって酸素が好き(酸素が必要)な生物なので、水田に水を張って稲を栽培すれば、大半が死滅します。主な圃場は水田ということですので、水稲とネギを交互に作るのが、とても効果的で確実な連作障害の回避策です。
また、化学薬品であるくん蒸剤を使ってもよい状況であれば、一度使用してみてもいいかもしれません。収穫量が落ちてきている原因が、病原菌によるものかどうかがはっきりします。ほかにも、即効性はありませんが、堆肥を利用して、土壌の肥沃度を高める方法もありますよ。
岩崎真也
農学博士、国立研究開発法人研究員
緑肥作物を適切に管理することが重要です
おっしゃる通り、緑肥作物のえん麦や「ソイルクリーン(ギニアグラス)」を使えば、有機物、つまり分解された植物によって、畑の土壌に養分を補給することができます。
しかしこの場合、緑肥植物の扱い方が大切なポイントとなります。生育期間が長くなりすぎてしまうと、土壌に加えて耕した緑肥作物の残りかすが土の中でうまく分解せず、土壌の窒素が足りなくなってしまうこともあります。
一方、すきこみ(土壌に肥料を加えて耕す事)から種まきまでの時間が短い場合には、緑肥の分解に伴って増加する微生物や化学物質の影響によって、作物の生育が悪くなることも知られています。
要するに、緑肥作物を適切に管理することが重要なのです。