埼玉県でネギ、小松菜、カブ、里芋などを中心に露地栽培しています。
父と一緒に仕事をして10年ほどになり、ようやく仕事も父に聞かなくても、自信持ってできるようになってきたところです。
そんなタイミングで「そろそろお前に任せるから、好きなように責任を持ってやりなさい」と言われました。
さらに同じタイミングでカフェ経営の友だちから「話題になるメニューを作りたいから変わった野菜を挑戦してほしい」と持ちかけられました。
そこで何かできるだけ珍しい野菜を栽培してみようと調べていたところ「水蓮菜(すいれんさい)」「サラトリオレタス」「キャンディーキウイ」など、おもしろい台湾野菜をいろいろ発見し、とてもワクワクしました。
とくに水蓮菜などは、ミニプールを作って育ててみたいほど気になっています。
とはいえ台湾野菜を日本で簡単に育てることができるのか、そもそも種を個人輸入できるのか、いざ考えるとわからないことばかりです。
海外野菜の栽培についての基本的ルールや注意点などを教えてください。
(埼玉県・深野さん/仮名・30代)
中村圭佑
FOODBOX株式会社代表取締役/CEO、フードカタリスト
まずは台湾当局に確認しましょう。課題は販路やブランディングです
新たな作物への挑戦、素晴らしい取り組みですね!新たな作物に挑戦するうえで、重要なポイントがあります。
種・苗等の取り扱いについては、権利関係も含め各国で考え方が異なります。きちんと台湾当局(行政院農業委員会等)に確認してください。
海外でも栽培できる品種である場合、台湾側での植物検疫や日本側での苗木等の輸入許可などがあります。輸入するまでには多くの手続きが発生し、時間もかかります。早めにご準備されることをおすすめします。
じつは私自身も台湾に住んでいたことがあり、台湾農業は専門です。
水蓮菜は非常に珍しい野菜で、台湾南部・高雄市「美濃」で栽培されています。すでにお調べいただいているようですが、ため池のような水を張った場所が必要で、日本でいうと蓮根の圃場のようなイメージです。
もちろん栽培技術は日本語のサイトではほとんど紹介されていません。まずはインターネット上で調査を行い、栽培技術だけではなく必要な投資額等も計算し、販売価格を仮で設定し、そもそも経営として成り立つのかを検証された方が良いかと思います。
日本国内で栽培されている方はいらっしゃらないと思いますので、一度台湾まで視察に行かれるとイメージが湧いてくるはずです。台湾で視察を受け入れている農家さんもいらっしゃいます。
課題はブランディング(ブランド化)や販路です。今回の場合はカフェ経営の友人と新たなメニュー開発を行うわけですが、栽培した野菜を全量買い取りしてくれるなど、販売単価等の合意が取れれば栽培も安定するでしょう。
とはいえ、1店舗での使用量は限られています。できれば在日中国人・台湾人等が経営する飲食店、中華系スーパーなど需要が見込め、それなりの量を買い取ってくれる販路を作ることが必要です。
販路の広がりは話題の広がりに比例します。それがブランディングへとつながっていきます。
例えば「パクチー」はブームになるまでに時間がかかりました。1990年代には非常にニッチな「くさい葉物野菜」という位置づけで、一部の中華料理店への販売だけでした。
それが2010年代以降ブームになり、女性を中心にパクチー鍋・パクチーサラダ等、取り扱う飲食店が爆発的に増えました。
このように、ひとりの農家さんだけでは、トレンドを作る量を栽培できませんし、ブランディングも簡単ではありませんので、販路をきっちり考える必要があります。