近畿地方で漁をしている親子2代の漁師で、私は70代です。
他県の一般企業に10年ほど勤めをしていた息子が、5年前に「船に乗る」と家に戻り、今はふたりで漁に出ています。
ところが、一昨年に私が大病をしたこともあり、かつてのような仕事が体力的に厳しくなってきました。
家族で話し合った結果、漁は息子に任せて引退を考えているところです。
仕事は好きなので、身体に負担のない範囲で、何かしたいなと考えています。
うちの集落には飲食店がないので、民家を改装して漁師メシを売りにした食堂を開業するのは、いいアイデアなんじゃないかと思っています。
自己流ですが料理は得意で、妻も手伝いたいとのこと。人が集まるようになって、地域に活気を取り戻したいという思いもあります。
しかし、いざ飲食店開業となると何から手を付けたらいいのかわかりません。
(近畿地方・平岩康雄・71歳 仮名)
西潟正人
地魚料理「あじろ定置網」、東京海洋大学講師
高齢で飲食店の開業は大変。地元の人を相手にした小さなお店がおすすめ
70代の漁師さんで大病を経験し、近くに飲食店がないということですね。
まず、想像されているよりも「飲食店は重労働業」です。人手も必要で、可能なら日々の開店準備や後片付け、接客や配膳などを担当する、腕の立つ若い方ひとりとサポートでもうひとりいるといいですね。
刺し身を切りながら、煮方も焼き方もひとりでこなすのは、小さなお店でも難しいでしょう。また、料理の腕には覚えがあるということですが、できないよりはできた方が良いという程度で、重要なことではありません。
料理がイマイチでも繁盛しているお店があるのは、集客は料理だけによるものではないからです。
飲食店の開業準備については、まず物件を確保したら、工務店と相談をしながら店舗の内装や外装を造ります。
開業前には保健所の検査があります。開業にあたり講習を受けますが、調理師免許があれば免除されます。しかし、フグ類を扱う場合は、各自治体が発行する免許が必要です。
最後に、私的な意見ですが、質問者さんの状況を想像すると、お住まいの集落に飲食店がないということは、観光客などがたくさんいる地域ではないと思われます。
漁師しかいない町で「漁師メシ」とは、いかがなものでしょうか。これからさらに高齢化が進みますし、大規模な店づくりは控えましょう。
数坪の居心地のいい店にして、地元の方に親しまれるよう専念してください。地元で日々捕れた魚だけを手頃な価格で出していれば、評判がお客さんを呼ぶようになるかもしれません。
漁師経験は何よりのアピールになりますから、充分に活用してください。船上で食べたような豪快な漁師料理を、昔話を交えながら食べさせる店なら、今の世の中、望むところです!