京都の20アールほどの圃場で、少量多品目のさまざまな野菜を栽培している農家です。
トマト、なすび、さつまいも、ピーマンなどを季節ごとに作付けしていますが、私の農園では特にスイートコーンが人気です。
毎年数百本ほど栽培するのですが、道の駅で販売すると売り切れてしまうほど人気です。
しかし、最近の無農薬野菜の需要を考えて、今年から無農薬のとうもろこし栽培にチャレンジしたいと思っています。
しかし、とうもろこしにはかなり虫がつくため、農薬なしで防除する方法に頭を悩ませています。
現に、昨年栽培してみたら、農薬を使わなかったとうもろこしは食害で販売できない状態になってしまいました。
何かいい方法はないでしょうか。
(京都府・斉村さん/仮名・60代)
原田清弘
一般社団法人 京都府農業会議 京都アグリ創生 現地推進役
商品として販売するなら無農薬では難しいのでは…?
スイートコーンを、商品として販売する目的で無農薬で栽培することは無理ではないかと思います。
家庭菜園であれば、防虫ネットをスイートコーンの実にかぶせて害虫を防ぐ方法や、雄花が出穂したあとは、10本に1本程度残して切り取ることで、茎や雌穂に被害を与えるアワノメイガの被害を少なくする方法もありますが、一方で、十分受粉しない可能性もありますから、商品として販売することは難しいと思います。
小黒裕一郎
小黒農場
栽植密度を減らし、風通しをよくしましょう。しかし、土地や気候にあった作物を育てるべきだと思います
私は、高冷地で農薬や肥料を一切使わない無肥料自然栽培という方法で、とうもろこしやトマト、サラダ野菜を育てています。
耕作環境の違いがありますから、相談者さんには参考にならないかもしれませんが、お答えします。
1、まずは、植える密度です。
普通のスイートコーンであれば、1反当たり4,000本植えますが、それでは風通しが悪くて、虫や病気も発生しやすくなってしまいます。
そこで私は、1反あたり2,000~2,500本までに密度を減らして栽培をしています。
また、苗を植える間隔も30cmおきではなく、40cmから50cmぐらいあけています。
そうすれば、病虫害は今より発生しにくくなるのではないかと思います。
2、次に栽培時期の前倒しです。知り合いの間には、1月とか2月の寒い時期に播種をして、トンネル栽培に取り組んでいる農家もいますよ。
夏の暑い時期に収穫するのではなく、それよりもちょっと早め、6月などに収穫できるので、病虫害が最も活発に活動する時期を避けて収穫できます。
この工夫によって、農薬の使用量が少なく済んでるんじゃないかと思います。
これからお話しするのは、あくまでも私の私見ですが、そうまでしてとうもろこしを京都の暖かいところで作ろうとするのではなく、できるものを作った方がよっぽど手間がかからないのではないかと思います。
私の地域でもとうもろこし以外にもいろいろ育てていますが、なぜ今もとうもろこしを栽培しているのかというと、簡単にできる品目だからです。
つまり、土地とか気候に合ってるから。
私は、「適地適作」「適期適作」「適切な管理」という三つの言葉を大事にしてるんですが、そのうちひとつでも欠けてしまうと、飼料や農薬を使用せざるを得なくなってしまいます。
私は高冷地でとうもろこしを栽培しているので苦労をしたことはありません。
そのため、どうしても無農薬でやりたいのなら、どうにか工夫をしてでもやればいいと思うのですが、多分そこまで手をかけても、わりに合わない苦労だと思うのです。
土地の側からすると、人間が作ったスイートコーンというのは外来種ですし、地球目線で言うと、宇宙人が侵略しに来たみたいなもの。
在来種であれば栽培は可能だと思いますが、スイートコーンと無農薬っていう組み合わせに限界があるんですよね。
しかし限界はあるんですけど、条件さえ整えば無農薬も可能です。
その条件というのが、繰り返しになりますが、まず、虫がいない高冷地での栽培です。
もしくは、畑の周囲だけでなく、天井も全部、防虫ネットで囲うとか、受粉した後、1本1本のとうもろこしすべてにネットをかぶせるしか方法はないと思います。
あるいは虫が卵を産んだそばから手で取って歩くとか。現実的にできるかは別ですが……。