栃木県で唐辛子を栽培している専業農家です。
先日、畑仕事の最中に葉っぱに物珍しいものがついているのを発見。
調べるとクサカゲロウの卵ということがわかり、クサカゲロウの幼虫はアブラムシを食べるということでした。
唐辛子栽培を始めてから長年アブラムシによる被害に悩んでいたので、「この卵が孵化すれば、アブラムシを食べてくれて農薬を使わずアブラムシを撲滅できるのではないか」とひらめき、試しにクサカゲロウの卵をそのまま放置してみました。
1週間後、無事に孵化したようで、幼虫の姿は見られませんでしたが、卵は無くなっていました。
そして毎年唐辛子に大量につくアブラムシが、クサカゲロウの卵があった付近には全くいなくなっていたのです。
きっとクサカゲロウの幼虫がアブラムシを食べてくれてに違いありません!
ということは、クサカゲロウを養殖し畑全体に幼虫を行き渡らせれば、無農薬で唐辛子を栽培できるのではないでしょうか?
しかし、そもそもクサカゲロウの養殖が可能なのか、クサカゲロウがアブラムシを食べるだけで本当に無農薬栽培につなげることができるのか、専門家の方にぜひ教えていただきたいです。
(栃木県・ 石田和也さん/仮名・40代)
上野高敏
九州大学大学院 農学研究院 生物的防除施設 天敵昆虫学分野 准教授
クサカゲロウなどの益虫を なるべく保護してみましょう。殺虫剤の使用には注意を!
たぶん、ウスバカゲロウではなくて、クサカゲロウという昆虫ですね。どちらも同じ仲間ですが、ウスバカゲロウは幼虫時代に「アリジゴク」と呼ばれていて、畑で見かけることはありません。
一方、クサカゲロウは畑や水田で一般的に見られる淡い緑色の体でとても儚げな昆虫です。アブラムシなどを捕食する重要な天敵、農家にとっては益虫です。ご相談者さんが見つけたのは、このクサカゲロウの卵だと思われます。
唐辛子には何種類かの重要な害虫がいます。クサカゲロウはその幼虫時代にアブラムシと、ガ類(ヨトウムシ系)の卵や小さな幼虫を食べてくれますが、アザミウマやコナジラミ、ハダニなどは食べないでしょう。そのため、クサカゲロウだけでは心許ないですね。
そしてクサカゲロウは養殖が可能です。実際に養殖されたクサカゲロウをアブラムシの天敵として販売しているお店もあります。
しかし、とても高価ですし、一般向けには販売していません。害虫対策にクサカゲロウを畑に放ち、利用する農家さんもいらっしゃいますが、養殖をしようとすると手間も時間もかかります。
今回畑で見つけたのなら、今後はクサカゲロウを保護するのが一番ではないかと思います。
また他にもテントウムシや気が付いていないかもしれませんが、寄生蜂なども生息していると思います。無農薬にすれば、それらの天敵昆虫やクモなどが害虫をある程度は抑えてくれますが、季節と場所によっては満足のいく結果にならないことも覚悟する必要があります。
するとどうしても殺虫剤に頼る場面は出てくるのではないでしょうか。その場合、天敵に影響が少ない殺虫剤がある(選択性殺虫剤と呼びます)ので、なるべくそれを使うようにしましょう。