京都府で2代にわたり栗を栽培する農家です。栗畑には現在100本ほどの木があり、1年で600kgの収穫になります。
収穫時は、自然に落ちた栗を、毎日ひとつひとつ火バサミ(トング)で拾っています。そして、イガ(栗のトゲトゲ)を外してから、できによって分類し、選果場へ出荷しています。
ときどき家族に手伝ってもらう程度で、収穫や出荷の作業はほぼひとりで行っています。
今後、収穫量を増やして販路を拡大することも目指していきたいのですが、栗を剥く人手が足りないことが大きなネックになっています。
ただ、畑の規模を考えると、先にコストをかけて新たに人を雇うというのは厳しい状況です。作業工程の見直しなどで、効率化をすることはできるのでしょうか?
(京都府・松山さん/仮名・60代)
松尾和広
松尾栗園
アルバイト採用、商品開発、ブランド発信など工夫して設備・人材投資を検討しましょう
石川県・能登で「松尾栗園」を営んでいます。
質問者さまは人手不足についてお悩みですが、当地の栗農家にも高齢の方が多く、早朝の作業や、栗拾い、選果作業などにはなかなか手が回っていないのが現状です。
当園では毎年収穫シーズンに、住み込みのアルバイトさんを雇っています。
栗は自然に落下した実だけを拾っています。栗は呼吸をしています。落ちてから収穫・冷蔵熟成されるまで、時間が経つごとに品質が落ちていきます。
落ちてから放置されている時間が長くなると、腐敗したり実に産み付けられた虫の卵による被害を受けたりと、ダメージは多大です。
今日拾い忘れた果実は、明日になったらまず商品になりません。時間との戦いなのです。そのため毎朝見落としがひとつもないようにしなければなりません。
意欲的で目がいい方をアルバイトさんとして採用し、毎朝夜明けのスタート時に「栗は今日拾えば100円だけど、明日なら0円になってしまいます」と伝えて、やる気を出してもらうよう工夫しています。
質問者さまはトングで拾って、後からイガ剥きされているようですが、私どもでは収穫現場でイガを手で剥くようにしています。
栗とイガと別々のカゴに入れながら作業を進めます。両手をフルに使うので、トングを使うより何倍も作業スピードが速いと思います。
収穫作業を映した動画がありますので、参考にしてください。
次に栗剥きについてですが、栗は皮の下も意外とデコボコしているので、人の手が必要です。当園では効率化のため、40~50万円の韓国製栗剥き機を導入しました。
その結果、手作業よりも圧倒的に速いのですが、皮を厚く剥きすぎるという欠点もわかりました。
すべて機械頼みだと歩留まりが悪くなってしまうので、ある程度は機械で粗剥きしてから手作業で仕上げる方法に落ち着いています。
以上、栗むきと収穫工程での当園での取り組みについてご紹介しましたが、今後のことを総合的に考えると、アルバイトさんだけでなくご自身も含めた人的コストについて考えることが必要な段階なのかもしれません。
人件費削減に追われながら生栗を出荷するといった従来のやり方では、低価格競争にならざるを得ず、疲弊してしまいます。
そこで私は「農家自身で焼き栗を加工販売する」という方法に行き着きました。
栗が凍るギリギリ手前の「マイナス2℃」で「45日間熟成」させることで、糖度30を超える焼き栗を生産・販売しています。
こうした工夫が、当園の栗にとって唯一無二の付加価値となりました。
質問者さまは京都在住ですね。長野の小布施などと並ぶ栗の一大産地です。
ここ能登とは違う強力なブランド力があります。そうした魅力を発信して販路を拡大し、しっかりと利益を出して、設備や人材への投資ができるよう、プランを練ってみてはいかがでしょうか。