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猛暑対策のため、ニンジン栽培で種まき時期をズラすのは正しいのか?

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猛暑対策のため、ニンジン栽培で種まき時期をズラすのは正しいのか?

自然農法に憧れて脱サラし、農家を始めて10年ほどになります。無農薬で化学肥料は使わず、さらに無畜産系肥料で栽培しております。

少量多品目の野菜を露地栽培で育てているのですが、夏まき品種のことで相談があります。

最近の夏の暑さは異常で、ニンジン(「時なし五寸」「オランジェ」「ピッコロ」)を7月〜8月ごろにかけて種まきしていましたが、暑さのせいなのか、うまく発芽しないことが増えてきています。

そこで、今年は実験的に暑さを避けて9月ごろに種まきをしようと考えています。

通常より2カ月ほど遅い種まきなので、収穫のタイミングもズレてしまいます。

しかし、いままでと同じように成長するのかどうかの保証もありません。不安な部分もありますが、このような挑戦はそもそも正しくないことなのでしょうか。
(東京都・大塚さん/仮名・40代)

さいこうやさい

実験は全体の5% で。発芽不良には10日間たっぷり散水したり、早生品種を選ぶなどの工夫がある

素晴らしいですね。新規就農から10年続けるのは、1割の方しか生き残れないので、とても尊敬します。

僕も愛知県知多半島で新規就農からスタートして「さいこうやさい」のブランドで、ニンジン、キャベツ、白菜を作ってきました。

最初は、自然農法での出荷を2年、その後は「有機JAS認証」の認定農業者になり、有機JASパッケージでの販売・流通を3年経験。さらに1本300g~500gの加工用ニンジンでの出荷・販売を5年経験したのち、収穫祭での個人向け直接販売での経験を14年続けています。

僕自身のそんな経験を踏まえて、これから回答しますので、参考になれば幸いです。

ご相談者さんは、今まで7月ごろから種まきをされていたそうですが、近年の猛暑の影響なのか、うまく発芽しないケースが増えたと感じていられますが、僕も同じ経験をしています。

そこで得た経験として、次の3つのポイントで考えたいと思います。

①発芽が揃いにくい(発芽が悪い)
②猛暑に対応した種まきが必要
③発芽不良の株には見切りをつけ、再度まき直す準備が必要か?

①については、種自体に問題がある可能性があるので、種苗会社に「この種の発芽の評判はどうですか?」など種の状況を聞くことがおススメです。

②、③に関しては、これから詳しく考えていきましょう。

②について 
ご相談者さんは、今後は暑さを避けて9月ごろに種まきをしようと考えているとのことですが、実験的に行うのは素晴らしいと思います。

いきなり全てを切り替えると、たいてい失敗しますので、新しいことに取り組む場合は「実験区画」から、少量で始めるのが安全策です。

とはいえ、収穫時期の遅れや、計算通りいくのかは不安ですよね。

その場合、「実験区画」は全体の5%程度にとどめることです。あらかじめ失敗を想定しておけば、リスクも管理できるでしょう。

ただ新しいことに挑戦をすることは常に不安がつきまといます。ご相談にも「夏まき野菜の時期をズラすのは選択肢として正しいのか?」と迷う心情が伺えます。

結論から申しますと、野菜の播種時期をズラすのは、おっしゃる通り正しくはありませんが、実験の余地はあると思います。

なぜなら、発芽してから収穫までの期間は決まっているため、夏は種まきを1週間遅らせると、収穫は1カ月遅れます。「発芽しにくいから」「生育が遅いから」と言って、種まきを遅らせていては、収穫までたどり着けなくなってしまいます。

実験を成功に導くには、気温が高くても、高い状況下で発芽させる手段を用意しておいて、毎年変わる気温に対しての対処を準備するというのが重要です。

そのうえで
A.播種、発芽はズラさない
B.気温の対処は、適切な期間を守る
 …これを忘れないでください。

とはいえ僕の場合、7月の発芽はあきらめています。発芽させるためのコストが高くつきすぎるからです。
8月以降の発芽のほうが収益性が高くなるので、これから僕のやり方を説明しましょう。

(1)発芽のための作業環境を整える【散水のやり方】
 
・発芽を揃えるためには、播種してから10日間は「土をずっと濡れた状態にしておく」のがポイント。
・この時、表面が濡れているだけでは足りていません。
・畝間の通路も水没してしまうくらいのベチャベチャに散水します。
・水やりは10日間行い、発芽率が7割以上であれば、もう2日くらい追加するのもありです。
・最終的には発芽率9〜10割を目指します。なかなかの労力です。

(2)発芽率5割以下の場合【見切り、切り捨て】

・(1)の作業を10日間行っても、発芽率が5割以下だった場合、僕は畝の立て直しを行います。つまり、切り捨てです。
・トラクターでそのまま畝を作り直して、種をまき直します。
・その後、再び10日間散水して、発芽率を高めますが、この時も水の量は前述通り、たっぷりやってください。

(3)8月以降の播種はいつまでできる?【播種は9月20日まで】

・前述通り、僕は7月には播種しません。暑すぎて、発芽以降もロスが多いからです。
・僕の経験上、安定した発芽が期待されるのは、愛知県知多半島の場合、8月27日です。
・8月27日に早生品種を播種すると、11月から収穫が可能ですが、最終期限は9月20日だと思ってください。
・この場合、収穫は半年後の3月~3月中旬までと覚えておくと、わかりやすいでしょう。
・繰り返しますが種まきを5日~1週間遅らせると、収穫は1カ月後ろにズレます。つまり、9月20日をすぎるとトウ立ちして収穫できません。

まとめると、(1)の散水と、(3)の播種期間を組み合わせることで、面積あたりの収穫量を可能な限り増やすことが可能になります。

播種時期と収穫時期の目安は、以下の通りですが、発芽を揃えるための10日間の散水は決しておろそかにしないでください。
Ⅰ. 8月27日の播種+早生品種=11月から収穫
II .    最終9月20日の播種+早生品種=3月収穫


これで面積あたりと、期間あたりの播種量を最大化できて、ニンジンの収穫量を増やすことが可能です。あとは実験レベルの面積で行い、リスクを回避しましょう!

さて、ここからはニンジンの品種について考えてみましょう!

ご相談者さんは、「時無五寸」と「オランジェ」「ピッコロ」を栽培されているということですが、僕はピッコロについては栽培経験がありません。なぜなら、僕の地域は、本来ならばニンジンの栽培には向いていない粘土質の高い「青土」と呼ばれる土壌なので、水没に強い品種を育てています。

参考までに、僕がメインで育てているのは、早生品種の「愛紅(あいこう)」です。粘土質の土壌でも、株間を5cm程度に調整して、排水環境を整えれば、長く美しい見た目で Mサイズ500gに太らせることも可能です。自然農で個人売りでしたら、Mサイズが売りやすいと思います。

同じように、自然農法の場合、ご相談者さんも作られている「時無五寸」や「黒田五寸」は定番です。「オランジェ」もとてもいいと思います。

9月に播種する場合は、まき遅れを挽回するために「愛紅」を選べば、早生なので12月には収穫を迎えられます。

ここからは、僕個人の意見ですが、自然農法でメジャーな固定種や「時無五寸」「黒田五寸」などの品種は、収穫期間を長くとるためには向いていないと感じています。

ご相談者さんは東京で営農されているそうなので、近隣の千葉県などのニンジンの産地で、最新品種や、新しめの品種の情報を仕入れておくと良いと思います。

情報を得ることで、まだ名前のついてない最新品種を仕入れられるチャンスも広がりますし、品種選びによって、生産コストを調整できる範囲が広がります。情報収集先には種苗会社もオススメです。

彼らも販売経路は増やしたいので、いろいろな品種を試すことで、ご自分の圃場に適した品種に出会えます。

野菜の生産には、「品種」が持っている力による部分が大きいので、「在圃性(畑で問題なく、長く収穫できる)」「発芽」「気温による見た目の良さ」については、栽培方法よりも先に、品種の研究にも熱心に取り組んでほしいと思います。

ご相談者さんに、僕が手始めにオススメしたいのは、「愛紅」です!愛知県の知多半島で僕が行っているニンジンの播種については、こちらの記事も参考にしてください。

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