露地で野菜を多品目栽培しています。冬場はキャベツ、ブロッコリーなどの葉物と、ニンジン、大根などの根菜類を育てています。
今年の春作から有機栽培に移行して、秋冬作に向けては比較的安価で手に入る鶏糞を主体に施肥しました。
11月からキャベツの収穫時期になりますが、生育は化学肥料を主体にしていた頃と比べて遜色はないものの、例年に比べてキャベツの葉の巻きが甘く、外葉が少し波打っています。
品種は寒玉キャベツで、葉が柔らかい「うま旨寒玉キャベツ」を育てています。
しかし、冬場は硬くしまって重量感のあるキャベツが直売所やスーパーに並ぶので、出荷するのに躊躇しています。
キャベツの葉の巻きが甘いのは、どこに問題があるのでしょうか。
(静岡県・村松健太さん/仮名・30代)
イチロウのゼロイチ農業(旧さいこうやさい)
キャベツの巻きが甘い理由は水不足かもしれません
有機栽培すばらしいですね!
ぜひどのような栽培方法をされているのか、村松さんの栽培を写真などで見てみたいと思いました。
キャベツに重量を出すための栽培の基本的な部分となる「追肥」について記載します。
1、鶏糞による追肥はうまくいっているでしょうか?
僕の経験上、追肥に鶏糞をやるのは必要量も多く、害虫も予想外に発生した経験があるため、窒素成分8までの有機JAS対応肥料(通常の肥料と遜色ない、粒状成型されたもの)をお使いになると扱いやすくなります。
キャベツの葉の大きさや枚数が少ないと、重量感が出にくいので、このタイプの肥料を使う方が、鶏糞よりは期待した生育が見込めるかもしれません。
また、追肥と同時に土寄せ(畝間の土を5cm程度耕す程度でOK)を行うと、肥料の効きが予定通りになるため、重量感をだすための大切なポイントになります。
僕ら「さいこうやさい」では植え付け後20日目と、40日目に、2回にわたって追肥とそのたびごとに土寄せを行っています。
2、栽培されている「うま旨寒玉キャベツ」の巻きが甘い理由は?
品種的には問題がないタイプだと思われます。
ご相談内容が「巻きが甘い」とのことだったので、それ以外はかなり理想的な生育だと予想されますが、あとは重量感を出すだけですね。
この理由は、シンプルに単純な「水不足」の可能性が高いです。
2023年の秋冬は、10月から12月末までほとんど降水量がなく、風が吹けば砂が舞うような砂漠状況でした。
このような天気では、水分が90%とも言われるキャベツのような葉物野菜では、重量が乗らなくても仕方ありません。
3、水不足を解消するには?
重量を増やすには、今からでも通路に潅水することです。圃場の通路のひび割れがなくなるほど、じゃぶじゃぶに水を流します。とにかく量が大事です。
1 収穫1カ月前から週に1回、通路にジャブジャブ潅水する。(通路が半日にわたって水没してもOK)
2 収穫前日でも、1をやるほうが重量がのる
3 キャベツが肥大のしすぎで割れない程度に調節する
上記の1~3の工程を行うことで、「締まりすぎて割れるほど」の重量感を持たせることができます。
僕はこの方法で、1kg未満のキャベツは畑にほぼなくなるほど重量を確保しています。
4、育てやすいキャベツの品種は?
上記の灌水対策を行うと、いずれ問題が出てきます。
しっかりと重量を確保すると、「うま旨寒玉キャベツ」のような品種では「割れやすい」などの問題点が出てくる可能性があります。
以前、僕はブログで「キャベツの栽培方法【完全ガイド】プロ農家の種まきから収穫まで」をご紹介しております。
そこでは、品種ごとに栽培時期をまとめておりますので、YUIMEの読者向けに一部を抜粋して転載しておきますね。
上記の品種は、重量が乗っても割れにくく、栽培しやすいタイプです。葉も柔らかく、有機質の多い土では、かなりの甘みを出すことも実証済みです。
割れにくく重量も目指せる品種にしていくことで、作付けした株数がしっかりと商品になっていくので、作業面で悩みが少なくなり、収穫時の玉選びの時間が低減します。
その結果、
・作業時間が減って経費削減
・収穫不能の株が減少して売上向上 という効果が目指せますので、経営面にプラスとなるでしょう。
愛知県知多半島で栽培するキャベツの品種なので、ご相談者さんの営農地とも距離が近く、入手しやすいと思われます。うまくいくことをお祈りしております。