茨城の白菜農家です。田んぼを活用して、稲作のない時期に白菜を作っています。
そのため出荷しているのは春白菜。例年、稲刈りが終わってから白菜の準備に取り掛かります。
私のこだわりはなるべく自然環境のなかで美味しい野菜を育てることです。「今年の白菜は甘かった」などと感じられるのも自然栽培の醍醐味だと思っています。
ハウス栽培と違って気候や条件に影響されやすいため、湿度や換気具合にも気を使っているつもりです。
しかし、2021年はなぜか結球しない白菜が例年より多かったように感じます。
稲作は猛暑でいつもより稲刈りが早まりましたが、白菜の種まきは例年どおりに行いました。
肥料の量や土壌改良もこれまでと変わらず、冬の寒い時期はビニールトンネルで換気を調整し、こまめにチェックもしていました。
冬の間に雨が多かったので、水はけが悪かったのかと自分なりに予想してみましたが、あまり自信がありません。
白菜が結球しなかったのは何が影響しているでしょうか。原因と対策を教えてほしいです。
(茨城県・林田靖幸さん/仮名・40代)
イチロウのゼロイチ農業(旧さいこうやさい)
水はけの良い土壌が上手く結球するポイント。工夫すれば雨続きでも大丈夫
私のいる愛知県でも、この年は植え付け時期の1カ月間にわたって雨が続き、不作が目立った年でした。
いただいたご相談内容からの推察になりますが、白菜の結球不良について私なりの考察と改善点をお伝えします。
私の経験上、水はけが良い畑ではキレイに結球し、葉は大きく、そして葉の枚数が多くなるという傾向があります。逆に水はけが悪い畑では、結球しなかったり、結球しても軽く葉が小さくなる……と、このような差があります。
つまり、白菜は水はけが悪いと外葉が育たなくなり、結球に至らないということがわかります。
今年はというと、雨が多かったにも関わらず私の畑は豊作となりました。具体的に工夫した点をご紹介しますので参考になれば幸いです。
まず、立てていた畝を15センチから25センチまで高くしました。
さらに例年より多めに施肥をして、水はけを良くするために亜リン酸を使用(肥料名はホストップという液肥で1,000倍、農薬と混用)。
固形肥料は追加しても吸えないと思ったので、例年どおり液肥「ペンタキープ(指定倍率、農薬と混用)」を使いました。
以上、私の経験談にはなりますが、生育期に雨が続くようなときは、ぜひ試してみてください。ペンタキープの使い方についてはこちらの記事をご参考ください。
関谷航太
あさひや農場
白菜が結球しない原因は「肥料の量」もしくは「土壌」にあります
質問文だけでは不明な部分もあるので、あくまでも播種時期・施肥量・その他日常管理は適切に行われているという前提で、今回は「肥料が多い・少ない」「肥料が吸える・吸えない」に問題を切り分けて、私の実体験を交えながら考えていきたいと思います。
白菜のような結球する野菜は、「肥料があればあるだけからだを大きくする(栄養成長)」「十分にからだが大きくなって肥料が切れてくると、結球して次世代を作る準備をする(生殖成長)」がライフサイクルの基本となります。したがって、十分に栄養成長した後、適切なタイミングで生殖成長に移ることが重要です。
肥料が少なすぎれば、葉が大きくならず、黄化したりして結球できませんし、逆に肥料が多すぎれば栄養成長が終わらずに、葉は巻いてくるのですが、いつまでたっても玉はフカフカでかっちりと結球しません。葉が青いままで生育旺盛なのが特徴です。
重要なのは、単純に肥料が多い・少ないと言っても、「肥料が足りない」のと「肥料があるのに吸えない」のでは、原因も異なれば対応も変わってきます。
質問者さんのように、最初の施肥が適切なのに結球しない場合、大雨で肥料が流れてしまったか(流亡)、低温による肥料分解速度の低下の問題が考えられますが、これは生育初期であれば、追肥することなどで、ある程度は回復できます。
次に、肥料が十分なのに吸えない場合ですが、根に問題があります。すなわち土壌の問題で、根が病気になっている生物的な原因か、もしくは湛水・干ばつなどといった物理的な原因である可能性があります。
根の問題である「黄化病」「根こぶ病」などが原因の場合、生育中はなすすべがありません。根が死んでいるので、追肥も効きませんし、葉面散布でM玉を目指すかどうか、判断に迷うところですが、次作でも必ず同じ症状が現れるので、土壌消毒や輪作などをして、根本的に改善しなければなりません。
また、灌水や干ばつなど、根元が酸素不足になり、肥料の吸収ができなくなる場合は、1秒でも早く土壌の物理性を改善しなければなりません。大雨なら圃場排水の徹底、干ばつなら、灌水ですが、特に干ばつの場合、「肥料があるのに吸えない」という場合に気をつけなければなりません。
判断を誤って「肥料が足りないのかな?」と追肥すると、天候が回復したり、灌水することで「肥料が吸える状態」に回復したときに、肥料が吸収されすぎて、内部石灰欠乏(アンモニア過剰)などの要素障害や、多肥による病害を引き起こす可能性があります。
まずは次作のために、「プラソイラ」などを使って排水性を良くし、根張りが良くなるようにして、灌水の準備や堆肥を施肥します。私も、水はけが悪かった田んぼを転換した畑に腐植資材を投入した結果、目に見えて大きな改善がありました。
一方、例年どおりに肥料を施用していても、肥料過多になる場合もあります。これは、前作の出来が悪くて、肥料が残っていたり、肥料散布機に不具合があって、土壌に肥料が残っていたり、多く入っていたなどの可能性が考えられます。簡易でもいいので土壌分析を行っておきたいものです。
また例年より生育が良く「肥料を吸いすぎた」ことが原因で結球に影響が出ることもあります。
これは私の経験ですが、初めて土壌消毒をした畑では、肥料を吸収する吸肥力が改善されていたにもかかわらず、それを考慮した減肥を行いませんでした。さらに、肥料効果がゆっくり現れるコーティング肥料の肥料放出のタイミングが結球時期と重なったために、いつまでたっても白菜が結球しませんでした。肥料不足と違って、肥料過多は対応できるすべがほとんどないのが困りものです。
以上、結球不足の原因を「肥料が多い・少ない」と「肥料が吸える・少ない」のふたつに分けて、対応策をご紹介しました。見極めは容易ではありませんが、お互い試行錯誤して豊作になるよう頑張りましょう。