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軟腐病(なんぷびょう)の予防方法を教えてください

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軟腐病(なんぷびょう)の予防方法を教えてください

これまで稲作をしてきましたが、経営のことを考えて畑に転換しようと考えています。

いまは近所の野菜農家さんから情報収集をしていますが、特に気になっているのが病害虫の予防方法です。

過去にうちの集落では、白菜農家さんが軟腐病のせいで、大変な目にあったそうです。

まだどんな野菜を栽培するか決めていませんが、軟腐病は野菜や花き類に被害を及ぼすと聞いたので、事前に対策しておこうと思います。

そこで、軟腐病の予防方法を教えていただきたいです。

李 哲揆

データサイエンティスト

水はけや風通しの良い環境が、軟腐病の予防につながります

軟腐病の予防方法


軟腐病は発症してしまうと効果的な対処法がありません。発症を事前に防ぐことが重要です。そのため、発症しにくい環境作りをしっかり行いましょう。

軟腐病の症状と原因についてはこちらをご覧ください
軟腐病とは?原因や対処法を知っておきたいです



排水や風通しを良くする


土壌の水はけと風通しを良くすることで、高温多湿を好む病原菌の繁殖を予防します。具体的には畝を高くし、地際部に湿気が溜まりにくいようにすると良いでしょう。

さらに、スプリンクラーや頭上灌水は、土と一緒に土壌中の病原菌を飛散させ、感染拡大を助長する可能性があります。予防のためには株元灌水を行いましょう。


作業道具の消毒をこまめに行う


剪定ばさみやピンセットなどの道具も軟腐病菌で汚染されると感染経路になります。

剪定は空気が乾いている晴れの日に行い、作業後は道具や手指をこまめに消毒することで効果的な予防になります。


連作しない


連作は土壌中の病原菌を増やすため、軟腐病にかかりにくいと言われるイネ科やマメ科の作物などと輪作を行いましょう。

また、軟腐菌は雑草や被害残渣で長く生存するため、定植前には土壌の消毒をしっかりと行いましょう。


抵抗性品種を使う


キャベツ、白菜、大根、玉ねぎなどは軟腐病に対する抵抗性品種があります。

品種により有効な病害虫の種類が異なるので、ほ場ごとに問題となる病害虫に合わせた品種を導入する必要があります。


薬剤散布


薬剤は降雨後に行うと防除効果が高いと言われており、特に台風が去った後には入念に行うと良いでしょう。

予防に効果的な薬剤や、害虫防除に効果的な薬剤があるので、目的や適用するものを使用してください。


軟腐病に効果のある薬剤


軟腐病は発症後の治療が非常に難しい病気ですが、予防効果のある農薬を事前に撒くことで発症を防ぐことができます。

軟腐病に有効な薬剤はプロベナゾール粒剤、カスガマイシン・銅水和剤、バイオキーパー非病原性エルビニア・カロトボーラ水和剤、スターナ水和剤、バリダマイシン液剤などがあります。

またベンレート水和剤やスターな水和剤は発症初期であれば、治療効果が期待できる農薬もあります。いずれも、作物に合った薬剤を散布しましょう。

ご使用に際しては、必ず登録の有無と使用方法(使用時期、使用回数、希釈倍数、処理量など)をご確認ください。

軟腐病の予防に効果のある薬剤


・オリゼメート粒剤(プロベナゾール粒剤)

世界初の植物防御機構活性化剤です。植物の病気に対する抵抗力を高める効果があります。

適用作物:ハクサイ、カリフラワー、ネギ、アサツキ、レタス、非結球レタス


・バイオキーパー(非病原性エルビニア・カロトボーラ水和剤)

軟腐病の微生物防除剤で、天敵への影響や環境への負荷が少ない環境に優しい薬剤です。「生きた菌」が有効成分となり、雨の影響を受けにくくします。

適用作物:野菜全般、シクラメン


軟腐病発症初期に治療効果が期待できる薬剤

・バリダシン液剤5(バリダマイシン液剤)

散布後、茎葉に吸収された成分が導管内の細菌の増殖を抑制する液剤です。

特有な作用機構(糖代謝系酸素阻害)で、結球後期まで防除することができます。

適用作物:バレイショ、ダイコン、タマネギ、ネギ、キャベツ、ハクサイ、レタス、非結球レタス


・スターナ水和剤

病原細菌の増殖抑制効果を基本作用とする有機合成防除剤です。

適用作物:キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カリフラワー、ピーマン、タマネギ、ネギ、バレイショ、レタス、非結球レタス、セルリー、パセリ、チンゲンサイ、アスパラガス、ニンジンなど


・カスミンボルドー(カスガマイシン・銅水和剤)

細菌性病害に効果を示すカスガマイシンと、古くから病害防除に使用されている汎用性殺菌剤である銅剤(ドイツボルドーA)を混合した薬剤です。

効力の持続性や耐雨性に優れ、安定した効果を示すのが特徴です。

適用作物:トマト、ミニトマト、キャベツ、ダイコン、ネギ、タマネギ、ニンジン、セルリー、バレイショ、ホオズキ、ユリ

軟腐病対策に効果的な農薬についてはこちらをご覧ください
軟腐病対策を行ううえで必要な農薬について知りたい



食害虫の駆除


軟腐病菌は傷口から感染するため、作物を食害する虫を防除することも対策となります。

代表的な害虫はアオムシ、ヨトウムシやキスジノミノハムシなどになります。

これらは農薬を使うことで防除でき、
アオムシやヨトウムシには、エルサン乳剤(PAP乳剤)、カスケード乳剤(フルフェノクスロン乳剤)、コテツフロアブル(クロルフェナピル水和剤)。

キスジノミハムシには、アニキ乳剤(レピメクチン乳剤)、エルサン乳剤(PAP乳剤)、ダイアジノン粒剤5(ダイアジノン粒剤)、モスピラン水溶剤(アセタミプリド水溶剤)を定期的に散布したり、ネットを貼ったりして防ぐ方法があります。


軟腐病は発生前の予防が大切


残念ながら現段階では軟腐病蔓延後には効く薬剤がないため、発症しないように早くから予防することが最も重要だといえます。

今回ご紹介した予防方法に加え、軟腐病に抵抗性のある品種を選定することも一つの手段です。

軟腐病が発症しやすい条件についてはこちらをご覧ください
軟腐病の症状と原因を教えてください

このお悩みの監修者

李 哲揆

データサイエンティスト

名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。

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