現在、露地栽培で野菜を生産していますが、畑の空いたスペースでらっきょうを栽培したいと考えています。
しかし、少し前に近くの農家さんで、らっきょうが軟腐病になってことがあるそうです。
軟腐病になるとかなりのダメージを受けるので対策したいのですが、そもそも軟腐病はどのような症状が出るのか理解していません。
らっきょうの軟腐病の具体的な症状や対策方法について教えてください。
現在、露地栽培で野菜を生産していますが、畑の空いたスペースでらっきょうを栽培したいと考えています。
しかし、少し前に近くの農家さんで、らっきょうが軟腐病になってことがあるそうです。
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李 哲揆
データサイエンティスト
ラッキョウ軟腐病は6~7月期に発生しやすくなり、感染後は株全体を腐らせます
ラッキョウ軟腐病とは
ラッキョウ軟腐病とは、ラッキョウの球(鱗茎)に影響を与える病害です。
主に以下のような症状があります。
・球から株が小さくなり育たない
・球の表面が軟腐しており組織が崩壊した状態になる
・根が少なく悪臭を放つ
通常、作物における軟腐病は、地際部や地下部の葉に斑点があらわれることで感染と判断できます。
しかし、ラッキョウの場合では土の中で育つ球部分から腐敗していくため、早期発見がしにくい病害です。
最終的には株全体を腐らせてしまうほか、同じほ場で育てる作物に蔓延させてしまう可能性があるので、早急な対策が必要となります。
ラッキョウ軟腐病の発生条件と伝染方法
ラッキョウ軟腐病を対策するには、軟腐病の性質や伝染方法から発生条件を把握しておくことが重要です。
どのような環境や条件で発生しやすいのかを知ったうえで、栽培を行っていきましょう。
伝染方法
ラッキョウ軟腐病の伝染方法は次の通りです。
・ラッキョウの球や根に食害昆虫などが傷を付けて、その傷口から土壌感染する
・土壌感染した軟腐病菌がラッキョウの細胞内で増殖し、病徴を示す
・降雨やかん水によって、感染した株から他の作物に伝染する
・感染した株を抜き取ったあとでも、軟腐病菌が土壌に潜んでおり、次の栽培期に新たなラッキョウを育てると、再び感染させてしまう
ラッキョウの病害はカビによるものがほとんどですが、軟腐病は細菌性の病害になります。
発生条件
ラッキョウ軟腐病の発生条件は次の通りです。
・梅雨時期の長雨や高温の夏場
・根腐萎凋病や萎凋病になったラッキョウがある農場
ラッキョウは、主に8~9月時期に球根を植えて、翌年の6月ごろに収穫されます(エシャレットの場合は4月ごろ)。
球根を植えるころは真夏になるので、まず植え付け期から軟腐病に警戒しなくてはいけません。
また、気温が上がり始める4〜5月頃から発病が見られ、収穫間近の6月は梅雨時期を迎えるため、軟腐病がもっとも発生しやすい時期となります。
ラッキョウ軟腐病の対策方法
ラッキョウ軟腐病を対策するには、耕種的防除と薬剤的防除といった2種類の対策方法が一般的です。
・耕種的防除:栽培方法や農場の環境改善
・薬剤的防除:農薬を使った防除方法
耕種的防除
ラッキョウを軟腐病から守るための耕種的防除には、以下のような方法があります。
・畑が多湿にならないように、水はけをよくしておく
・抵抗性品種を活用して伝染を防ぐ
・連作を避けるか連作障害が出ないようにする
ラッキョウ軟腐病は、発生してから治療ができないので、未然に防ぐことが重要となります。
特に病原菌は土壌中の水を通じて移動し感染するので、水はけのよい土壌作りを心掛けましょう。
また、抵抗性品種を活用するか、ラッキョウの株そのものの抵抗力を上げることも対策の1つです。
薬剤防除
ラッキョウの球に傷口を与えるような食害昆虫は、農薬を使って防除することが一般的です。
また、農薬によっては殺菌剤のような役割を持つものもあり、軟腐病の細菌を防除することにもつながります。
軟腐病対策に効果的な農薬についてはこちらをご覧ください
「軟腐病対策を行ううえで必要な農薬について知りたい」
軟腐病が発生した際にやるべきこと
ラッキョウ軟腐病の感染が発覚したら、まずはすぐにその株を抜き取って処分しましょう。
また、見た目は健康なラッキョウの株であっても、発病株の周辺の株であれば感染している可能性が高いので、周辺の株や土ごと取り除く必要があります。
その後は、土壌消毒だけでなく、抜き取る際に使った農器具全てを消毒をして、再発防止に努めましょう。
このお悩みの監修者
李 哲揆
データサイエンティスト
名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。