レタスの栽培を始めたばかりの新規就農者です。育てた作物はネットで販売しているのですが、まだまだ知識も経験も足りないので、勉強中の身です。
最近知り合ったベテラン農家さんから「レタス栽培をするなら菌核病にも気をつけな」とアドバイスをいただいたのですが、どうすればいいのか悩んでいます。
農薬はあまり使いたくないので、できれば土壌消毒などで耕種的な防除を行いたいのですが、どのように消毒をすればいいのか、アドバイスをいただきたいです。
消毒効果や消毒をするタイミングなど、具体的なことを教えていただけると助かります。
李 哲揆
データサイエンティスト
菌核病の土壌消毒には、太陽熱消毒が効果的です
菌核病の土壌消毒方法
菌核病は、土壌中に潜む糸状菌(カビ)が発生する原因になりやすいです。
耐性菌の発生を防ぐためには、土壌消毒として農薬を散布する農家もいます。
また、農薬を使用しない場合は、圃場に水を張る湛水や、太陽熱での消毒も効果的です。
作物の植え付け前に土壌を消毒しておくことで、菌核病の元となる病菌を死滅できる可能性があります。
菌核病が発生する原因についてはこちらをご覧ください
「菌核病の発生原因や条件は?」
湛水による消毒処理
菌核病菌は酸素がなければ生きられません。
したがって、圃場を湛水し土壌中の酸素を無くすと死滅させることができます。
気温の高い夏期では5〜10日ほどで安定した防除効果が得られます。この場合、湛水後の排水管理が大事になります。
ハウス栽培の場合
ハウス栽培では、夏季にハウスを密閉状態にすることで、太陽熱による消毒ができます。
ハウスにたっぷり冠水し、マルチを被せ、密閉状態にするとハウス内の温度が高温になるので、しばらく放置することで菌核病の病菌を死滅させることが可能です。
また、施設全面にマルチを張ることで病気の原因となる胞子の飛散を抑えることもできます。
なお、菌核病の病菌は約33度の温度の場合30日間で死滅すると言われています。
そのため、晴天時にハウス内の温度が30度を超えるのであれば、高温時の夏季でなくても消毒が可能です。
露地栽培の場合
露地栽培では、土の上にマルチと呼ばれる黒いビニールを被せることで消毒が可能です。
地表上を全体で覆い、すき間をなくすように水枕(水封マルチ)で重石をすることもあります。
こちらも、晴天時に33度以上の地温が保てていれば、約1カ月間で菌核病対策に効果的な土壌消毒ができます。
ただ、夏場に圃場全面をビニールで覆う作業は重労働なので、スケジュールを組み、涼しい時間帯に行いましょう。
その他発生してしまったらすぐ対処すること
菌核病の対策を徹底しても、作物が感染してしまう可能性は充分にあり得ます。
栽培時に土壌消毒や農薬での消毒を行っても、感染した作物の治療はできません。
仮に菌核病に感染した作物が見つかった場合は、すぐに被害根を除去しましょう。
また、除去した被害根は周辺に放置すると、菌核病の胞子が飛んで周囲の株にまでも感染させる恐れがあります。
被害根を除去したら、すぐにほ場の外へ持ち出して処分をしましょう。
感染していない周辺株も取り除き、除去後に土壌消毒をすることで感染の拡大を防げる場合もあります。
土壌消毒の効果と注意点
農薬や太陽熱での消毒は、菌核病を未然に防ぐために行っておいた方が良いです。
しかし、消毒をしたからと言って、100%菌核病を防げるわけではありません。
菌核病の病菌は土壌中に長年残る性質があり、長期にわたって発生源となる可能性があります。
消毒後は多湿を避け、風通しの良い環境作りを心がけて、菌核病の発生を抑制しましょう。
また、太陽熱消毒の場合、温度が出にくい地域や天候不順の影響で、消毒の効果が薄れる場合もあります。
その場合は前述の湛水の方法により消毒を行いましょう。その他には圃場の天地返しも防除に有効です。
土壌消毒以外の対策方法についてはこちらをご覧ください
「菌核病の対策方法を教えてください」
このお悩みの監修者
李 哲揆
データサイエンティスト
名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士(農学)を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。