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今年からトマトのハウス栽培をはじめた農家です。
これまでは露地野菜を中心に育ててきましたが、隣の農家さんが離農するというので、圃場を借りて、トマトのハウス栽培をはじめました。
トマトを栽培した経験がなかったので、近くに住んでいるトマト農家さんからアドバイスをもらっていたのですが、その農家さんが昨年、菌核病を出してしまったそうです。
うちも注意すべきだなと考えていますが、ちゃんとした対策法がよくわからず、アドバイスをいただきたいです。
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李 哲揆
データサイエンティスト
菌核病は、耕種的防除や農薬等の化学的防除で対策ができます
菌核病の対策方法
菌核病は15〜20℃と比較的涼しい条件で発生する病気です。トマト栽培ですと冬から春の施設栽培で見られることが多いです。
菌核病は作物に感染すると、すぐに進行してしまう病害です。
やがて腐敗・枯死をしてしまう恐れがあるので、未然に防ぐことが重要となります。
主に耕種的防除と農薬等での化学防除があり、どちらも菌核病を未然に防ぐ対策方法として有効です。
菌核病が発生する原因についてはこちらをご覧ください
「菌核病の発生原因や条件は？」
耕種的防除
耕種的防除とは、菌核病が発生しにくい環境を整える防除法を指します。
具体的には、以下のような防除法が有効です。
ほ場の天地返し
菌核病の元となる病原菌は３〜４年土壌中で生き続けますが、10cm以上の深さでは菌核が死滅することが知られています。
したがって、作付け前に天地返しを行うことで、土壌表面の菌を地中に封じ込めることができます。
ただし、過去に発病歴がある場合は病原菌を表面に戻す可能性があるので、やめましょう。
土壌の湛水による消毒
菌核病の病原であるカビは酸素がないと生きていけません。
したがって、トマトを育てていない夏場に土に水を張り土壌中の酸素をなくすことで、ほ場の病原菌を死滅させることができます。
紫外線カットフィルムの利用
菌核病は病原菌が胞子を作り、それが植物体に付着、感染することで起こります。この胞子を作るには近紫外光が必要です。
したがってハウス全面を紫外線カットフィルムで覆うことで、ハウス内での病気を抑えることができます。
農薬等での化学的防除
菌核病の菌は、農薬などの化学的防除でも対策ができます。
殺菌剤として用いられる、「カンタスドライフロアブル」や「シグナムWDG」などが効果的です。
しかし同じ薬剤の連用は耐性菌を生む可能性があるので、注意が必要です。
菌核病に感染してからの対策方法
作物が一度菌核病に感染してしまうと、その後の治療は困難です。
完全に回復する見込みはないので、感染株はすぐに抜き取りましょう。
また、抜き取った株は周辺に放置するのではなく、ほ場の外に持ち出して処分する必要があります。
感染株の周辺の株も感染している可能性があるので、取り除くことをおすすめします。
菌株が発生したほ場は再発する可能性が非常に高いので、連作を避け、農薬や湛水といった土壌消毒により病原菌がいない状態を作りましょう。
菌核病の土壌消毒方法についてはこちらをご覧ください
「菌核病を対策するために、土壌消毒方法についてアドバイスをいただけませんか」
ほ場の環境に適した対策方法の選定が大事
菌核病の対策では、耕種的防除と農薬などでの対策が一般的ですが、全ての対策を全てのほ場で実施できるわけではありません。
・湛水消毒→水が抜けやすいハウスでは使えない
・農薬での対策→菌核病登録の農薬が作物によっては合わない可能性、残留農薬の問題から定期的な散布ができないケースなど
上記のような理由から、ほ場や作物に応じて適切な対策を選定することが大事になってきます。
気になる場合は最寄りの農家さんや試験場の方に相談してみましょう。
このお悩みの監修者
李 哲揆
データサイエンティスト
名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士（農学）を取得。東北大学、東京大学、理化学研究所などを経て、2018年からは東京農工大学生物応用システム科学府にて助教を務める。主な研究テーマは土壌微生物を用いた環境に優しい農法の開発。2021年4月から民間企業でデータサイエンティストとして働く。