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ライチ栽培の水やりはどうすればいいのでしょうか?

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ライチ栽培の水やりはどうすればいいのでしょうか?

ライチ栽培を新たに始めようか悩んでいる農家です。最近、周りの農家が熱帯果樹の栽培をはじめていて、私もやってみようかなと考えています。

いろいろと作物を調べたところ、ライチが気になっています。

ライチが暖かい環境を好むことは知っているのですが、私の圃場は灌水設備がなく、水の確保が難しい環境です。

ライチを栽培するのに水やりはどうすればいいのか、教えてください。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

ライチの生育にはたっぷりの水やりが必要です

ライチ栽培での水やりの目的


ライチは温暖な気候に適していて、果実の生育期にはたくさんの水が必要になります。

また、ライチが多く生産されている中国南部や台湾では高温多湿で雨期があることからも、水が非常に重要なことが分かります。

さらに、日当たりが良いこともライチ栽培に適した条件です。日当たりが良い場所では土が乾きやすくなるため、水やりの頻度も多くなります。


栄養を運ぶ


水やりを行うと、根から水を吸い上げるのと共に、土壌中から吸収した栄養を葉や果実に運びます。

そのため、十分な肥料を与えているのに葉や果実が成長しない場合は、水不足が原因かもしれません。


果実肥大を促す


水やりをすることは、果実の肥大を促すことにもつながります。

さらに、水やりによって樹全体に水分や栄養分が行きわたり、樹勢の維持にもつながるため、ライチの実を安定的に収穫するためには水やりが欠かせません。


光合成の促進


ライチに水やりをすることで、光合成が促進されます。

光合成は太陽光などの光エネルギーと水、二酸化炭素を使い、酸素とデンプンなどの栄養を作り出します。

水は栄養を運ぶだけでなく、ライチの樹の成長に必要な栄養を生み出すためのものでもあるため、非常に重要です。


水やりの量とタイミング


土が乾いてきたら水やりをする


ライチは、土が乾いてきたら水やりをします。

土の表面が乾いていても、乾いているのは表面だけで土壌の中にはまだ十分な水分が残っている場合もあります。

土壌表面を少し掘ってみて、土が湿っているかどうか確認しましょう。過湿になってしまわないように注意することが大切です。

乾燥時には土が湿り水が浮き出るくらいたっぷりと、土が湿っているときには水やりを控えたり表面をあっさり湿らす程度にしたりするなど、その場に応じて調整しましょう。

ただし、花芽形成時期(10月以降)は、水やりの量を控えて下さい。やや乾燥することで、樹体内部で花芽に変わっていきます。

また、成熟期から収穫期も水やりの量を控えて下さい。上記で説明したように、水やりは果実肥大を促します。つまり、収穫期前に多くの水やりをすると果実の品質の低下および品種によっては裂果を招きます。


夏の場合


気温が上がる夏は、水分が蒸散して土壌が乾きやすくなる時期です。

さらに、樹の水分がないと葉焼けを起こしてしまう場合もあります。

そのため、土壌の乾き具合によっては、1日2回以上の水やりをしたり、鉢であればそこから水が流れ出るくらいのかん水量にするなど、水不足にならないようにしましょう。

また、水やりのタイミングは朝の早い時間帯に行うことがおすすめです。水やりの水も熱くならない朝方の方がライチにとっては最適です。

日中の高温時に水やりをすると根が痛むこともあるため、できるだけ避けたほうが良いでしょう。土壌が乾きやすいところでは、夕方、日が沈む頃、2回目の水やりを行う方が良いでしょう。


冬の場合


ライチは、夏と比べて冬の時期にはあまり水を必要としません。気温も低いので、朝夕などの時間帯の水かけは避けましょう。

そして、冬はライチをやや乾燥気味にしておく必要があります。冬の時期に少し乾燥させておくと、花芽分化の促進が行われるからです。

翌年の収穫に関わるので、注意しましょう。


ライチ栽培の水管理における注意点


葉先が茶色くなると水切れのサイン


ライチが水切れを起こさないように、気をつけなければいけません。水切れを起こすと、葉先が茶色く変色し、枯れたような状態になってしまうことがあります。

土壌が乾燥していれば、すぐに水やりをしてあげましょう。


実をつけてからは果実の破裂(または裂果)に気をつける


着果後の果実肥大期に、水分過多が原因で果実の割れが起こることがあります。特に収穫前などに裂果が起こりやすいので注意しましょう。

果実の割れが起きる原因は、果皮の成長スピードを果実内部の成長スピードが上回って、内側からの膨張に耐えきれず割れが起こってしまうからです。

ライチ栽培はちょうど梅雨の時期と被り、高温で多湿な環境になることも影響します。

そのため、土壌水分の過不足や、圃場を見回りライチに割れがないか観察して、水やりの量を調整しましょう。


花粉が水に弱いのであまり濡らさないようにする


ライチの花粉は水に弱いので、水やりの時にあまり濡らさないようにすることが重要です。

水やりの方法は、かん水チューブを使ったり、ホースで水をかけたりなどさまざまな方法がありますが、ライチの花が咲いている間は、なるべく花(樹体)に水をあてないようにしましょう。

基本的には、株元つまり地面に水やりするように心がけて下さい。

また、ホースで根元に水をかける際には、土をえぐらないように散水ノズルをつけて、柔らかい水を与えてあげることがおすすめです。

ライチの性質や適切な水管理を学んで、ライチ栽培を検討してみてはいかがでしょうか。

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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