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ライチの栽培適地について教えてください

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ライチの栽培適地について教えてください

ライチの栽培をはじめようかと考えている農家です。最近、うちの地域でも温暖化が話題になり、これまで育てていた作物が育たなくなってきました。

周囲の仲間たちと他の作物を育てるべきか話題になることがあり、熱帯果樹のライチを栽培してみようかと検討しています。

ライチは日本国内でも栽培されているという話を聞くのですが、どのような気候や温度での栽培に適しているのでしょうか?

ライチの栽培適地を教えてください。

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

ライチの栽培適地は、温暖な気候で日当たりが良く、排水性の良い土壌です

ライチが育てられる環境


ライチが好む気候


ライチは暖かい環境を好む熱帯果樹で、耐寒性はやや低い作物です。

そのため、ライチが栽培されている地域は温暖な地域が多く、温度の低い地域ではほとんど栽培されていません。

また、ライチ栽培では着果後の果実肥大期(開花して幼果が大きくなっていく時期)に十分な水を必要とします。かん水が容易にできる、水資源が豊富な地域での栽培をおすすめします。


ライチはハウスでの施設栽培が一般的


国内でのライチ栽培は、一般的にハウスでの施設栽培が行われています。

ハウス栽培が多い理由としては、
1、冬の時期に加温(最低温度7度以上を確保したい)をして越冬させることができる
2、開花期に雨にぬれず、受粉をスムーズに行うことができる(受粉時はミツバチなどの放花昆虫が活発に受粉できる状況をつくる必要があるため)

ことが挙げられます。

ライチは露地栽培でも育てられますが、国内では沖縄周辺でしか行われていません。鹿児島本土以北で安定した栽培をしたい場合は、ハウス栽培が適しています。

ライチの栽培適温


ライチの生育適温は20〜28度で、高温過ぎても生育によくありません。気温が35度以上になると、熱帯・亜熱帯果樹でも高温のストレスを感じ、生育が阻害されます。そのため、高温で葉を焼いてしまわないように気をつけましょう。

また、接ぎ木用の台木を育成するために、種から育てる際にも生育適温内で管理すると発芽しやすくなります。


最低気温は7度以上で管理


ライチ栽培では、最低気温は7度を下回らないようにすることが重要です。

0度以下でも一時的な低温であれば影響が出ない場合もありますが、-2.2度では小枝が枯れたり、-5.5度では主枝(株元は主幹と言い、そこから分岐した太い枝を主枝と言います)まで枯れ込んだことが報告されています。


低温期間も必要


ライチは温暖な気候下での栽培が適していますが、花芽形成のためには、18度以下の低温にあてる期間も必要です。

そのため、暖かい時期と10月以降の花芽形成時期に適度な低温になる地域がライチ栽培に適しています。

反対に、熱帯地域のように1年中暖かい地域では、十分な低温期間がないので、花芽分化せず着果がうまくいかないこともあります(ただし、熱帯地域では、雨季と乾季をうまく利用し、乾季の乾燥ストレスによって花芽分化を起こさせている場合もあります)。

さらに、花芽形成の条件は品種により異なります。ライチには多くの品種があるため、それぞれの品種特性を把握して栽培地に適した品種選びをすることが重要なポイントです。


ライチの栽培適地


国内におけるライチの主な生産地は九州地方です。中でも、宮崎県と鹿児島県の生産量が多くなっています。

その他に、本州や沖縄でも栽培されていますが、生産量はごくわずかです。国産ライチの生産量は少なく、希少価値が高いという現状があります。


日当たりが良く弱酸性で排水性の良い土壌を好む


ライチは日当たりがよい環境を好みます。

しかし、苗が小さいうちは強い直射日光で葉が焼けてしまうこともあります。そのため、真夏など直射日光が強い季節は注意しましょう。可能であれば遮光ネットなどで直射日光を避けるような対策をおすすめします。

また、土壌は弱酸性で排水性のよいところがおすすめです。定植前や栽培の途中でも、土壌phが酸性かアルカリ性に偏っていないかチェックしましょう。

さらに、水が一部に溜まってしまわないように、排水対策を行いましょう。


温暖化の影響


近年、温暖化の影響により日本の平均気温が上昇傾向にあります。それにともなって従来の日本で栽培してきた果樹に加え、栽培品目の新たな可能性が増えてきました。

熱帯果樹であるライチもそのうちの一つです。

国産ライチの流通量は少なく、特に生ライチは高級なフルーツとして扱われています。

しかし、環境の変化により、ライチ栽培に適した環境が整えば、栽培をはじめる農家さんが増えてくるかもしれません。

栽培適地について理解し、新しくライチ栽培を始めてみてはいかがでしょうか。

このお悩みの監修者

前田隆昭

南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授

琉球大学農学部を卒業後、和歌山県庁に入庁して農業改良普及所の技師や、果樹試験場の研究員などを歴任し、2009年退職。同年、農業生産法人「有限会社神内ファーム21」に入社し、南方系果樹の研究を経て、2015年から南九州大学環境園芸部果樹園芸学研究室の講師に。2021年同大学・短期大学の学長に。2022年5月、学長退任後も教授として引き続き学生を指導する。

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