趣味で海釣りをしていますが、ずっと昔から漁師に憧れていて、いつか挑戦してみたいと考えていました。
そんな時、地元に帰らなければいけなくなったので、この機会に漁師を目指してみようかと考えています。
漁師がどんな仕事をするのか、正直あまりわかっていませんが、テレビなどでマグロ漁師の様子を見たことがあり、とても興味を持っています。
しかし、マグロは資源確保のために漁獲枠が決められていると耳にしたことがあるので、どうせなら環境に優しいと言われる定置網をやってみたいです。
そこで、マグロの定置網漁について、詳しく教えていただけないでしょうか。
石戸谷 博範
海と定置網の研究室
マグロの定置網漁は漁獲量が多いのがメリットです
マグロの漁獲法
現在日本では、以下の方法でマグロの漁獲が行われています。
・定置網漁
・一本釣り
・延縄(はえなわ)漁
・巻き網漁
定置網漁は、マグロの回遊時期に合わせて網を仕掛ける漁獲方法です。
一度網に入ると出にくい構造になっており、日本に流通するクロマグロの多くはこの定置網漁でとられています。
魚を傷つけにくく一度の漁獲量が多い点がメリットで、近年は幼魚などだけ逃がせるような生態系に配慮した構造の網も使用されています。
マグロの漁獲制限
現在、太平洋クロマグロは減少傾向にあり、世界的に資源確保に向けた取り組みが推進されています。
中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の合意により2011年から大中型まき網漁業による小型魚(30kg未満)の管理を開始しましたが、2015年1月からは大型魚(30kg以上)の漁獲を基準年(2002〜2004年)の水準から増加させない措置を導入し、大臣許可漁業や、定置漁業などの沿岸漁業においても、漁獲管理を開始しました。
2018年の漁期からはTAC法に基づく管理に移行し、2019年の漁期以降は、大臣管理区分および都道府県にTAC(漁獲可能量)の配分を行いました。
さらに、2020年12月に新漁業法が施行されたため、2021年漁期からは新漁業法に基づく管理に移行しています。
新漁業法では、漁船ごとに年次漁獲割当量(IQ)が設定され、漁船ごとに、年次漁獲割当量の範囲で漁獲量を管理していかなければなりません。
※詳細はこちらをご覧ください
※太平洋クロマグロの漁獲状況についてはこちらをご覧ください
マグロ漁で定置網を選ぶメリット
定置網漁は「待ちの漁法」のため、魚を傷つけることなく漁獲することができ、さらに、一度に大量のマグロを獲ることが可能です。
漁獲制限に注意しながら漁を行わなければなりませんが、単価が高いマグロを出荷することができるのは、漁師にとって大きなメリットとなります。
また、資源の減少が指摘されているマグロにおいて、網目を調整することで幼魚を逃すなど、自然にも優しいと言われる定置網では、資源管理を行いながらマグロ漁を行うことが可能です。
このお悩みの監修者
石戸谷 博範
海と定置網の研究室
定置網漁業学の専門家。2009年水産海洋学会より「相模湾における急潮と定置網漁業防災対策に関する研究」で宇田賞を授与。定置網漁業に関する国、地方、業界の各委員を務め、日本沿岸各地の地域活性化に取り組んでいる。博士(東京大学農学)。