先日、農業未経験の友人から副業で魚を利用した畑をやってみたいと相談がありました。
魚に餌をあげるだけで野菜が育つ、環境に優しい次世代の農業らしいのですが、こういった農業が注目されはじめているのだと知りました。
私も相談にのる中で、環境に配慮したとても良い取り組みだと思い、空いた農地を活かしてチャレンジしたいと思っています。
友人はそれほど大きくない水槽で育てているので、水温管理や室温管理は難しくありませんが、私は空いている農地にハウスを建て、大規模に始めたいと思っています。
しかしうちの圃場は北海道の中でも特に寒い地域にあり、ハウスを利用しても水温が氷点下になってしまうことがあるかもしれません。
水温が低いことで魚に影響が出て、野菜が育たないということはあるのでしょうか?
氷点下の海の中でも魚は生きており毎年収穫されていますが、この仕組みを利用する際には水温が高い方が野菜の育ちがいいなど、何か条件があれば教えてほしいです。
(北海道・東和一さん/仮名・30代)
山本祐二
株式会社プラントフォーム代表取締役CEO
日本でのアクアポニックスならチョウザメが◎。植物に合わせ適切な温度管理を
魚の育成を利用した農業に興味を持っていただき、大変嬉しく思います!
弊社は、有機栽培の工業化の実現をめざしアクアポニックスの会社を立ち上げました。
アクアポニックスとは水産養殖の「Aquaculture」と、水耕栽培の「Hydroponics」からなる造語で、魚と植物を同じシステムで育てていく新しい農業の形です。
海外でのアクアポニックスで養殖する魚はティラピアがスタンダードです。また、家庭用の小さいシステムの場合は金魚やメダカが飼育されています。
日本はティラピアを食べる文化がなく一般的ではないことから、弊社ではチョウザメを飼育しています。
チョウザメならキャビアもとれますし、食べても美味しく、さらに病気になりにくい強い魚であることも日本でのアクアポニックスに向いています。
実際にチョウザメの糞の栄養素が含まれた水耕栽培は、窒素やリン酸、カリ、ミネラルなど植物に必要な要素が通常よりも多く含まれています。
一般的な土壌栽培に比べて栽培期間が2分1に短縮され、液肥栽培の植物工場に比べて2.6倍も生産性が上がるという結果も出ているほどです。
露地栽培のレタスでは収穫まで2〜3ヶ月を要しますが、アクアポニックスだと最短3週間で成長します。農閑期である冬でも栽培が可能で、1年で通常の露地栽培の10倍以上が見込まれるなど、可能性を秘めているのも魅力のひとつです。
質問者さんは空いた農地を使って試したいとのことですが、アクアポニックスを扱っている会社は弊社以外にも4〜5社ありますが、市場を作るまでは至っていないのが現状です。
ただ、最近では少しずつ認知されてきており、質問者さんのお友達のように、小規模でアクアリウム的に個人で楽しんでいただけるようになってきました。
そのような状況ですが、弊社で2018年から始めた新潟県長岡市での1000平方メートル規模のビニールハウスで行っているアクアポニックスは非常に順調です。
野菜栽培と魚の養殖、販売まで行っており、現在は長岡市内のスーパーマーケットや道の駅をはじめ、20社程度の取引会社へ「FISH VEGGIES」というブランドで野菜を出荷・販売しています。
また、国内最大の2000平方メートル規模のアクアポニックスプラントの建設を、岩手県大船渡市で行うことを発表しました。
成功するためにはある程度の規模の大きさが必要ですので、弊社はまず技術を培い、ノウハウを提供し、新しくアクアポニックス事業への参入したい人を支援するといったサービスを展開したいと考えています。
水で栽培できるものであれば、レタスやクレソン、サンチュ、バジルなどの葉物野菜や、イチゴ、パッションフルーツ、ブルーベリーなどの果実、花き(観賞用)、人参、大根、生姜、ビーツなどの根菜類、葉茎菜類の白菜など、実にさまざまな植物が栽培可能です。
ただ、相談者さんも北海道の冬の気候を心配されていた通り、チョウザメは寒くて死んでしまうことはありませんが、活動の適温は20℃前後といわれています。
あまり低すぎると活動は鈍ってしまいますので、温度調整は必要です。
また、水が凍ってしまっては水耕栽培もうまくいきません。低温に強い小松菜やターサイもありますが、育てる野菜の種類に合わせて屋内を適温に保つことが必要です。