愛媛県で、果樹栽培を中心に行ってきました。まもなく70歳になりますが、60代後半に健康を害し、2年ほど休養中です。農地をそのままにしておくこともできないので、体調が回復するまで人に貸し出すことにしました。
貸した方は自治体の仲介で紹介していただきました。まだ30代前半でしたが、好青年で最初の1年目は非常に頑張っていました。しかし、2年目の途中で突然行方知れずになってしまったのです。住んでいたアパートも引き払われていました。
農地が放棄されたままなので、雑草や虫、病気などが気になって仕方ありません。自治体にも相談しましたが「仲介しただけなので、それ以上の責任はとれない」とのこと。
その青年の居場所すらつかめない状況ですが、法的措置はとれるのでしょうか? その際、費用の問題もあると思います。手続きの方法や相談先などを教えてください。
(愛媛県・高橋さん/仮名・69歳)
岩崎紗矢佳
弁護士
借主が行方知れずでも契約解除得る方法はあります。まずは弁護士に相談を
農地を耕作放棄地にしない(その借主以外が耕作する)ために、法的措置としては、借主との賃貸借契約を解除します。もし、農地に借主が残していったもの(残置物)がある場合には、農地を明け渡してもらう手続きが必要となります。今回のように借主が行方知れずになった場合でも採り得る方法があります。
ご相談の内容から、本件は「農地法3条1項に定める許可を受けての賃貸借契約」であり、現在も契約期間中と推察します。この場合、契約を解除するためには、都道府県知事の許可が必要となります。今回は借主が行方不明で耕作も放棄されているので「賃借人が信義に反した行為をした場合」として許可される可能性が高いと考えます。農業委員会にご相談されると良いでしょう。
その他に必要な手続きとしては、借主に対する「契約解除通知」です。借主はアパートを引き払い行方知れずとのことですが、所在を突き止めなければなりません。弁護士には、一定の場合に認められている調査手段があります。まずは弁護士に相談することをおすすめします。
それでも所在が判明しない場合には、契約解除だけであれば「公示による意思表示(民法98条)」、明渡しまで求める場合には「公示送達」することを考え「農地の明渡請求訴訟」を裁判所に提起することが考えられます。
法的手順を踏めば、借主が行方知れずになった場合でも、契約解除は可能です。
弁護士を探すためには、日本弁護士連合会が設置する中小事業者向けの弁護士面談予約サービス「ひまわりほっとダイヤル」や、お住まいの地域の弁護士会の「法律相談センター」などをご利用ください。
原田清弘
一般社団法人 京都府農業会議 京都アグリ創生 現地推進役
正式な貸借契約(農地法又は経営基盤法による貸借契約)をされているのなら、まず、農地のある市町村の農業委員会事務局に相談してみてください。