父の実家で露地野菜づくりを行う祖父が、高齢で農業をやめると言っています。
父は継ぐつもりがないようなので、孫の私が代わりに新規就農して畑を引きつごうと思っています。
現在、畑は祖父の家近くに2カ所あり、面積は30アールほどです。
栽培する品目は年間30品目50品種ほど。近くに有名なJAの直売所があり、ほぼ毎日そこに出荷しています。慣行栽培ですが減農薬を心がけています。
当面は祖父に野菜づくりを学びながら直売所出荷を続け、将来的には有機栽培に移行して産直主体に切り替えて行きたいです。
ただ、30アールの畑は必ずしも広いとはいえないので、年間通じて上手に作付けて作り回さないと経営的には厳しいと思っています。
祖父の作付けも参考にして、これから年間の作付け計画を立てようと思っています。
これまでナス科のものは連作を嫌うので毎年栽培場所を変えて栽培していますが、そのほかは栽培する畝の位置はあまり変えていないようです。
農業雑誌などを見ると、コンパニオンプランツ同士を同じ畝で栽培するなど、連作障害や病害虫を予防しながら有効に畑のスペースを利用する方法があるようで、そういった工夫も積極的に行って行きたいと思っています。
30アールの畑で年間通じて多品目の野菜を作り回す上で、上手に作付けを行うコツを教えてください。
(神奈川県・栗原健さん/仮名・30代)
鈴木雅智
ブロ雅農園
栽培品目の選び方は「作りやすい」「長く採れる」「変わった野菜」「面積をとらない」が基本です
私は、神奈川県三浦半島で100品目の多品目栽培を行っています。年間の作付けに関しては、夏の主軸は露地メロンで、その他はナスを15品種、ピーマン5種、カボチャ類を3種、そのほかにも細かい作物を栽培しています。
冬はブロッコリーを中心に、茎ブロッコリー類5品種や、15品種のダイコン、5種類のニンジンなどになります。
わが家では200aの畑を保有していますが、夏作は手間がかかるので直売所用に稼働しているのは30aくらいです。
おっしゃる通り、30aというのは畑としては広くはありませんが、直売所に多品目出し続けるには、ちょうどよい面積だと思います。
最近、ある会社から30aの畑をプロデュースして、常に作物の収穫体験が楽しめるようにしてほしいという相談をいただきました。
ちょうど同じ条件なので、この事案にどう対応したのかを紹介しますので、参考にしてみてください。
栽培品目の選び方は、「作りやすい(旬である、農薬をあまり使用しなくても作れる など)」「長く採れる」「変わった野菜」「面積をとらない」という基準で選定しています。
まず「作りやすい」という点ですが、多品目栽培は効率だけで考えると、とても効率が悪く、忙しいです。一つ一つに手間があまりかけられません。
売れるからといって、夏にダイコンやキャベツをつくれば害虫が寄り、農薬散布の量も多くなります。
したがって、作りやすい旬のものをできるだけ手間をかけずに栽培するという考え方で、作目を選びます。
次に「長く採れる」という点ですが、30aという狭い畑の場合には1回採りのブロッコリーのような作目は作りません。長く採れないからです。
その場合、茎ブロッコリーのさまざまな品種をつくります。うまく採れれば1株で2,000~3,000円採れるといわれています。収穫の手間はかかりますが、長く摘みとれます。
「変わった野菜」をつくるという点ですが、わが家の近所の直売所は神奈川県で1、2番目に大きく、400人の農家が登録しています。
そうなると、直売所が同じ野菜で埋め尽くされるということが起こります。
たとえばナスの時期は紫の「千両2号」などが大量に並び、冬には大量のダイコンやキャベツが並びます。
確かに旬の定番野菜はおいしいし、一番必要な品揃えですが、変わった野菜を求めるお客さんも10人に1人くらいはいます。
直売所ではカラフルな野菜や小玉のサイズなど、変わった形態が好まれるので、「品種は同じでも色や形、サイズがバラエティに富むようにしている」というのは素晴らしいですね。
常識にとらわれることなく、変わった品種や珍しいものがあれば、栽培がそこまで難しくなくて、長く採れるものであれば、どんどんチャレンジした方がいいと思います。
地元の種屋さんから種や苗を仕入れると、みんなも同じものを買う可能性があるので、インターネットなどで探して購入するのもおすすめです。
「面積をあまりとらない」という視点も必要かもしれません。
先の体験農園では、直売所で人気のあるトウモロコシやサツマイモはほとんど作りません。
トウモロコシは病害虫や獣害も多く、手間がかかりますし、何より一発採りで終わるというのが、狭い面積で行う場合はリスクになります。
むしろカラフルなナスやピーマンのほうの方が長く採れますし、収入にもなります。
サツマイモは手間がかかりませんが、とにかく面積をとるので、狭い面積だと厳しく、カラフルなカブなどの方が時期をずらしながら栽培すれば、長い期間採れて、面積もあまりとられません。
なお、連作障害の対策については、土壌診断や微量要素肥料の施用、太陽熱処理などの方法で対応しています。
そのおかげで、私の畑では連作障害が怖いメロンでも、40年間同じ場所で連作ができています。
面積に余裕があって輪作ができるのが理想ですが、面積が狭いとそれが難しいことも多いので、それ以外の対応法も考えておくとよいでしょう。
30a普通の出荷のみで営農する場合は収入的にはかなり厳しい戦いになります。