会社を定年退職して、昨年の春から実家がある山間集落に戻ってきました。
現在は、前にいた会社の仕事を請け負いながら、合間に稲作(一部作業委託)と野菜作りをやっています。
私が住んでいる集落内でも、耕作放棄された農地や休耕地が増えていることから、近々、それらの土地を借りて農地面積を増やして、農業に本格的に取り組みたいと考えています。
ところが、困っていることがひとつ。農作業に軽トラックは欠かせませんが、持っていないのです。
父が亡くなった 8年ほど前に売り払ってしまったので、現在は2台持っている幼馴染から古い方を借りて、必要なときに使わせてもらっています。
いつまでも借りているわけにはいかないので、購入しようと知人に「どの車種がいいんだろうか?」と相談してみたのですが、あまり考えずに選んでいるらしく、参考になりません。
自家用車なら好きなメーカーやモデルなどにこだわりますが、私の周りではいずれも、ディーラーからすすめられるままに買ったとか、他の人も乗っているからなどの基準で選ぶ人が多いのです。
車種によっていろいろと特徴もあると思いますし、農作業に適した仕様もあると思うので、おすすめの車種を教えてもらえませんか?
(山梨県・中田克典/仮名・60代)
早川大喜
大喜農園/TOP HAT
国内で軽トラを自社生産しているのは2社だけ。
プロの農家の視点で、僕なりに軽トラックの選び方、安く購入する方法をご紹介しましょう。
安く買いたい場合、これまでは中古車が狙い目でしたが、最近は国内外(海外では特にアメリカ)で、アウトドアをやる人たちに軽トラが人気なので、20年落ちでも33万円くらいします。
そこで新車を探すことになりますが、その際に押さえておきたいのは、現在、軽トラを自社で生産しているのは、スズキとダイハツだけという点です。
以前は、スバルだと「サンバー(2012年2月で生産終了)」、ホンダだと「アクティ(2021年4月で生産終了)」、スズキだと「キャリー」、ダイハツは「ハイゼット」、三菱は「ミニキャブ」、トヨタの「ピクシス」、日産は「クリッパー」を製造していました。
特にスバルの「サンバー」は、水平対向エンジンを導入し、しかもエンジンの位置が最後尾にあるため、乗っていても静かで、荷物を積んでいないときでも車体が安定し、“農道のポルシェ”ともいわれて、根強い人気がありました。
ホンダの「アクティ」も人気が高く、エンジンが前輪と後輪の真ん中の荷台下にあるため、走行が安定しています。
上記の2モデルを中古で手に入れようとしても、今ではプレミアがつくくらい値段が高くなっています。
優れた機種が生産終了になってしまったのは、なぜでしょうか?…背景には農家の減少によって軽トラ需要が落ち込んだことがあります。
軽トラ市場から撤退していなくても、他社に製造委託するメーカーも増えています。
日産と三菱はスズキのアクティの OEM車(名前と社名が違うだけ)で、トヨタも完全子会社であるダイハツのハイゼットのOEM車の取り扱いです。
つまり、新車を購入する場合は、実質的にダイハツのハイゼットか、スズキのキャリーの「二(社)車択一」ということになりますね。
具体的に機能面を見ていきましょう。荷台の広さについて、両方ともほぼ同じです。
燃費はカタログ情報からすると、キャリーの方が車体が軽いため、3〜4kmほど良いですが、ハイゼットの方は「農業女子」とのコラボなどもあり、カラーリングが多く、フェイスが格好いいです(アクティは白かシルバーが基本、最近は紺色も選べる)。
ただ、濃い色だとキズが目立ちやすいので、プロ農家は白かシルバーが無難でしょうね。
値段ですが、私の地元で見積もりを取ったところ、スズキの方が少し安くなりました。
少しでも安く購入するための秘策は「競合させると安くなる」、つまり相見積もりをとって価格交渉にのぞむことです。
例えば、ダイハツのハイゼットを買いたいとしたら、トヨタのピクシスの見積もりも取って価格交渉に使うということです。
これでディーラーが10万円値引きしてくれたら十分でしょう。
というのも軽トラは元々、販売価格が安いため、値引きはこの辺りが限界だからです。
あとは展示品や試乗車として使割れていた新古車も狙い目。
スズキは定期的に安くディーラーに卸しているようです。新古車なら、新車よりも10〜20万円ほどお得になります。
次に、オプションのタイプはいくつかありますが、安全性を考えるとエアコンとパワステは必須です。
雨天時はフロントガラスが曇りやすいため、エアコンで曇りを取りたいところ。
また舗装されていない農道を走る機会が多いので、四輪駆動の方が安心でしょう。
商用の軽トラでも農業(農汎)スペシャルのモデルがあり、このタイプには3つほど、農業に特化した機能があるので注目です。
ひとつめは、デフロックボタンで、片輪がぬかるみにハマった際、もう片方の車輪も1本のシャフトで繋がれた状態になるため、ぬかるみから抜け出しやすくなりますを出やすくなります。
田んぼや畑で収穫物のすぐ脇に横付けできるので、便利。
ふたつめは後輪に板バネが1本追加でついているので、重い荷物を乗せたときにも衝撃が少なく、走行性が安定します。
みっつめは作業灯がついているので、早朝や夜の作業で便利です。
こうしたことから、軽トラを安く賢く買うためには、キャリーかハイジェットの新古車が狙い目だと言えます。