群馬で、野菜の専業農家を営んでいます。
私ももう喜寿目前という高齢になってきたので、遺産相続で子供たちになるべく負担をかけないようにしたいと考えています。
農家仲間とそんな話をしていたところ、仲間は「税理士に相談したら、自宅の隣で売り物の野菜を育てていると損をすると言われたよ」とのこと。
私はと言うと、土地は2カ所所有していまして、自宅の前(南側)の畑で販売用の野菜と自宅用の野菜を、ちょっと離れた土地で販売用の野菜だけを栽培しています。
仲間が税理士さんから聞いた内容が私にも当てはまるなら、仲間のマネをして対処しなければと思うのですが、そもそも 「自宅の隣で売り物の野菜を育てていると損をする」とは、どんな理由があるのですか?
(群馬県・鳥羽さん/仮名・70代)
田中寛子
税理士・永光パートナーズ
固定資産税は登記簿上ではなく現況の地目によって決まります
質問者さんがお知り合いの方から聞いた内容の詳細はわからないのですが「自宅の隣で売り物の野菜を育てていると損をする」というのは、おそらく土地評価上のことが理由かと考えます。
土地評価においては、土地は地目(宅地、田、畑、山林といった土地の種類)ごとに評価されます。ただし、登記簿に「農地」として記載されていたとしても、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)の使用状況が「宅地」や「山林」などの地目としてふさわしければ、その現況に即した地目として評価されます。
もし住宅と同一敷地内にある土地の一部で花や野菜を栽培している場合、栽培している土地はいわゆる「家庭菜園」として扱われます。この「家庭菜園」は自宅の一部とみなされ、「宅地」に区分されるのが一般的です。
一方で、農業委員会に農地として登録されている場合や、固定資産税評価上の地目が「農地」となっている場合や、その土地で栽培した野菜を販売のために出荷している等の場合には、「農地」として判断することになるかと思います。
質問者さんのお知合いが相談した税理士は、「宅地」よりも「農地」のほうが固定資産税が安いことから「自宅の隣で売り物の野菜を育てていると損をする」という表現をしたのではないでしょうか?
なお、その土地が「家庭菜園」であるか否かは、その土地の利用状況によって具体的かつ個別に判断されます。
例えばそこで作物を作って販売していたとしても、面積が小さく、それのみでは農地としての存在価値を認めることができず、客観的に見て住宅の敷地の一角として判断するのが適当である場合には「農地」には該当しないものと考えられます。