露地栽培で白ネギをメインに多種類の野菜を作っております。
白ネギは春先から時期をずらしながら種まきをして育てているのですが、大雨のせいでネギの軟腐病が発生してしまいました。
葉の色も急激に黄色に変わってしまい、慌てて先輩農家さんに相談すると「消石灰を大量に使ってみるといい」とアドバイスをもらいました。
「大量」と言われてもピンとこなかったので使う量を見せてもらったのですが、ドバドバとかけているような感じでした。
あまりの量に驚いていると、先輩は「かけすぎかな?と思う量が効果的なんだ」と言っていました。
消石灰の使いすぎは良くないという話も聞いたことがあるので不安です。
適正量や撒き方のコツを知りたいです。
また、種まきをの時期をずらしているため、発生していないネギもありますが、そちらには何も対策しなくても大丈夫でしょうか?
(神奈川県・木村さん/仮名・30代)
村田翔一
ロックファーム京都 代表取締役
消石灰は不要です。排水対策の徹底、連作を避けることを重点的に行ってみてください
私は京都で九条ネギを作っており、堆肥にこだわった土づくりを実践しています。
消石灰をまくことについては、聞いたことがありますが、私の圃場ではやっておらず、知り合いのネギ農家でもやっていません。
消石灰をまかない理由は、土壌が締まりすぎてしまうからです。
他の産地では土壌も異なりますし、栽培方法もまったく同じようにはいきませんが、私の土づくりをご参考までに紹介します。
私が徹底しているのは、「排水対策を徹底する」「連作を避ける」の2点です。
排水対策といっても暗渠をつくるような大がかりな土木工事は行っておりません。
畑の周囲にぐるりと排水用の溝を掘って、水がたまらないことを徹底しているだけです。
排水対策を徹底しても、絶対に軟腐病にならないわけではありません。
私の畑では、1年中、安定的に九条ネギを供給するために周年で収穫しています。
そのために夏に大雨が降ると、切ったところから腐ります。そこで被害が拡大しないために連作を避けています。
ネギの後はスイートコーン、その後は枝豆というように、ネギと相性が良く売り上げにもつながる作物を輪作します。
もし圃場をたくさん持っている農家さんならならば、収穫が終わったあとの畑は、水を張って休ませて緑肥を植えたりすると、土壌のポテンシャルを維持することができるので良いかと思います。
しかし、私の場合、圃場の広さは限られていますので、売り上げにつなげるために排水対策と輪作の徹底して対処しています。
櫻井杏子
株式会社INGEN 代表取締役
石灰過剰は逆効果にもなりかねないので、まずは土壌分析から始めてみて
先輩が「消石灰をドバドバとかけまくった」とのことですが、結果として一時的であっても土壌のアルカリ度数をかなり高くしようとしたことが推測されます。
極端なph環境は菌にとって住みづらくなりますので、軟腐病に限らず繁殖は止まります。
とはいえ、それは同時に植物にとっても過酷な環境となります。
以前にカブの亀裂に関するご相談でもお話ししたように、石灰過剰は要素同士の拮抗作用が働き、他の微量要素の吸収を大きく妨げてしまいます。
また、石灰のあげすぎによって土壌が締まってしまい、根の生育も阻害されてしまいます。
軟腐病は高湿度・高温を好む菌によって繁殖します。
蒸し暑く、長雨が続いたような時期に傷ついた組織や柔い組織(例えば徒長気味な状態)から侵入します。
つまり強い細胞・強い組織を作ることが一番の予防策といえます。
チッソ過剰による徒長の防止、適切な量の石灰、細胞壁強化に役立つケイ素を苗の時期から与えてやることが大事です。
お話から察するに、おそらく土壌分析はされていないかと思います。ぜひ土壌分析をしてください。
根本的な原因ともいえるチッソ過剰な状態の判断はもちろん、さまざまな微量要素を客観的に把握できます。その数値がわかれば、感覚に頼るのではなく適切な処置が可能となります。