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近海に魚がいなくなった…原因はなに?対策を教えてください

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近海に魚がいなくなった…原因はなに?対策を教えてください

私はまき網漁をしている者です。近年、地元の漁師みんなが悩んでいることがあります。

それは、近海に魚がいなくなったことです。魚が獲れないのです。本当に困っています。

以前は近海でもたくさんの魚が獲れていました。

しかし、年々獲れなくなっていき、今では本当に厳しい状況です。

その影響でより遠い海域まで漁場を求めなければならず、燃料代は上がるし、労働時間も長くなっています。

かと言って魚の価格は上がらないので、厳しい経営が続いています。

潮の流れや温暖化などさまざまな原因があるのでしょうが、なぜ近海に魚がいなくなったのか専門家に原因を教えてほしいです。

そして、近海に魚がいなくなった環境の中で、今後どのようにして漁を継続していけばいいか、アドバイスをください。
(長崎県・前田さん/仮名・50代)

Tさん

水産研究者

漁場に来遊する時期や魚種に変化があるかもしれません。漁協や水産試験場などに相談しましょう

ご質問から、困っておられる状況が伝わりますが、答えるのがとても難しい内容です。

的確に答えられるかどうか分かりませんが、魚が獲れない原因として、
1、資源自体が減っている可能性
2、資源はあるがいつもの漁場に来遊しない可能性
3、漁場に来遊しているのに漁獲できない可能性
4、その他の可能性
のいずれかだと仮定して一般的なコメントをします。

はじめに「1、資源自体が減っている可能性」について説明します。

通常は、カタクチイワシを獲られているとのことですが、カタクチイワシはマイワシの多い時代には少なくなることが知られています。

そういったことから、最近の資源状態があまりよくないのは確かだと思います。

少し古いですが、実際2020年度の水産研究教育機構によるカタクチイワシ対馬暖流系群(長崎県沖のカタクチイワシを含む)の資源評価の結果でも、資源水準は「低位」となっています。

ただ、ごく最近急に減少しているのかは、当方にはわかりませんが、カタクチイワシは産卵期が長いこともあり、マイワシのように大変動はせず、比較的安定していることが知られています。

また、前述の資源評価でも、動向は「横ばい」となっています。

さらに、2021年3月に水産研究教育機構が行った長期漁海況予報でも「(2021年の春季発生群が前年度と同程度ならば)0・1歳の豊度は前年並みか上回り、直近の漁況も合わせて判断すると、(2021年4~9月の来遊量は)不漁だった前年を上回り、平年並みと考えられる」となっています。

よって、資源全体として急に減少しているという様子は見られていないと思います。

次に「2、資源はあるが、いつもの漁場に来遊しない可能性」について説明します。

太平洋側では、黒潮の大蛇行などによって、対象魚種が漁場に来遊しない現象はよく知られています。

一方、東シナ海側は比較的海況が安定していることが知られていますので、漁場への来遊もそれほど大きな変動はないと思います。

ただ、当方には、実際に漁場としておられる海域の事情が分かりませんので、漁場に来遊しなくなっているという現象が生じているかもしれません。

その場合、まずは漁協、普及員の方々、あるいは水産試験場の方々などと相談して、海況の変化、近隣漁場の漁海況の変化などに関する情報を集めてみるのが良いと思います。 

次に「3、漁場に来遊しているのに漁獲できない可能性」について説明します。

すでにベテランでいらっしゃるので、漁獲技術が原因であるとは考えられません。

漁獲技術以外の原因としては、漁場に来遊する時期が通常と異なっていることなどが考えられます。

そこで、漁協、普及員の方々、あるいは水産試験場の方々などと相談し、JAFIC(一般社団法人漁業情報サービスセンター)の漁海況予報、近隣の漁協での漁獲状況などの情報を集めて、漁場への来遊時期が変わっていないか調べてみるのがよいと思います。

最後に、「4、その他(温暖化による分布域の変化と魚種交代)の可能性」について説明します。

例えば、北海道でのブリの多獲、サケの不漁、日本海北部でのサワラの増加など、多くの魚種で温暖化による分布域の変化が観察されています。

カタクチイワシは、比較的温暖な海域に生息するので、温暖化の影響は小さいと思います。

それでも分布が北上し、いつも使っている漁場で漁獲できる魚種が、ウルメイワシ、キビナゴ、あるいはメアジなどといった、より温暖な水温を好む魚種に変りつつあるかもしれません。

その場合、漁場を北に変えて、カタクチイワシを獲り続けるという選択肢もあります。

それが難しければ、獲れる魚種を獲って高く販売する工夫をするしかないと思います。

長崎では価格の低いウルメイワシも、高知では高価格で取引されるような例もあります。

対象魚種を変えることは簡単ではありませんが、日本各地で参考になる取り組みが実施されていますので、漁協、普及員の方々、あるいは水産試験場の方々などと相談し、獲り方や販売の仕方についての情報を集め、対処の仕方を検討するのが良いと思います。

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