梨を育てている農家です。
これまで、剪定した枝は燃やしていましたが、最近は環境問題への意識の高まりもあるので、粉砕機でチップにして施用しようと考えています。
ただ、最近増えていると聞く黒星病は、落ち葉が感染源になると言われているので、剪定の枝が原因になって、黒星病にならないか心配です。
チップ後に堆肥化して施用するか、そのまま表面に施用するかは決めていませんが、剪定枝の施用が黒星病の増加につながる可能性はありますか?
(栃木県・石川謙太郎さん/仮名・40代)
梨を育てている農家です。
これまで、剪定した枝は燃やしていましたが、最近は環境問題への意識の高まりもあるので、粉砕機でチップにして施用しようと考えています。
ただ、最近増えていると聞く黒星病は、落ち葉が感染源になると言われているので、剪定の枝が原因になって、黒星病にならないか心配です。
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橋本哲弥
橋本梨園
梨の剪定枝の施用には白紋羽病のリスクも。1~2年堆肥化させて
梨の剪定枝をチップ化してそのまま畑に施用しても、黒星病は増加しません。
黒星病は落葉と花芽基部でのみ越冬するため心配無用です。
それよりも白紋羽病の発生が増える可能性があります。
剪定枝のチップは病原である白紋羽菌のエサになるためです。
白紋羽菌は元々畑に存在しており、本来土壌の有機物を分解してくれる有用な菌ですが、密度が高くなると梨の木に被害を及ぼします。
密度が高くなってしまう理由はいくつかありますが、大きな要因となっているのが粗大有機物の施用です。
一般的に粗大有機物は別の場所で腐熟・発酵してから、堆肥として畑に投入されます。
ところが粗大有機物がそのまま土中に入れられると、それらを分解しようと土中にいる白紋羽菌が一生懸命に働き、栄養源として増殖してしまいます。
そして増殖した菌はそのまま別の栄養源を求め、元気な梨の木の根を冒す、これが白紋羽病増加の仕組みです。
白紋羽菌に感染した木は、白い菌糸が根に付着しており、葉が小型化して色が淡くなったり、新梢の伸びが停滞したりするなど樹勢が慢性的に低下します。
菌密度の高い圃場では、前年元気だった樹が春先に突然枯死するなど急性的な症状があわわれます。
たちの悪いことに一度発生してしまうと、徐々に勢力を広げ、なかなか抑えることができません。まずは発症させないことが肝要です。
剪定枝チップは粉砕しているとはいえ生の木です。剪定枝をそのまま土中に埋めているよりはマシですが、やはりリスクはあります。
廃棄処分してしまうか、用いる場合は別の場所で1~2年間堆肥化させてから施用することをおすすめいたします。
なお白紋羽病の発生の多少は土質によっても大きく変わります。
私の圃場のような火山灰土では多発傾向があり、チップの散布はご法度とされていますが、一方で水田地域の沖積土の圃場ではほぼ発生していません。
そのような地域では堆肥化せず圃場にチップを散布している方もいます。
そのまま用いる場合は一度、地域の同業者や普及員、営農指導員などに話を聞いてみることをおすすめいたします。
詳細については下記も参考にしてください。
▼白紋羽病 | 農業害虫や病害の防除・農薬情報|病害虫・雑草の情報基地|全国農村教育協会
▼樹齢20年の梨を栽培。白紋羽病が発生して収量が半減…。どうしたらいい?