ブリ養殖に適した水質や水温について教えてください

YUIME Japan編集部 / 2023.12.27

分析・管理

#養殖 #ブリ

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現在、私が働いている水産会社で、新たにブリの養殖をはじめようかと検討しているところです。

隣県ではブリ養殖が行われていて、最近ではブランド化もはじめて、売上が上がっているという噂を聞きました。

そこで、うちでもできないか、可能性を探っています。

しかし、海面養殖なので、水温や水質が気になっています。

うちの海域でも問題ないか調査する必要があるので、ブリの養殖に適した水温や水質について、教えていただけないでしょうか。

中平博史

全国海水養魚協会専務理事

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ブリの養殖では18〜28度の水温で管理を。成長過程に合わせた水温と溶剤酸素量の管理が重要です

ブリを養殖するために適した水質・水温とは？

ブリの養殖には、比較的温暖な環境が必要です。

成長に適した水温は18～28度とされ、この水温で管理すると、ブリ体内のトリプシンといった消化酵素が活性します。

消化酵素が活性すれば、食べた餌の消化が早く、体重の増加につながります。

ただし、ブリは成長過程で適切な水温が少しずつ下がっていく魚種であるため、養殖業者は、成長に応じた水温での飼育管理をする必要があります。

ブリ養殖の最適な水温についてはこちらもご覧ください
「ブリ養殖における最適な水温を教えてください」

水質管理はブリの成長と健康に大きな影響を与える

ブリ養殖をするうえで、水温や溶剤酸素量（水に溶けている酸素濃度の量）といった水質の管理は不可欠です。

適切な水温で管理されたブリは、水温が高いときに成長し、低くなると脂肪を体に蓄積するため体重が増加します。

しかし、適切な水温が管理できていないと、消化酵素の活性が低下し、食べた餌の消化が遅くなり、成長が停滞してしまいます。

〇低水温期（14度以下）の場合
餌を食べる量が減り、食べた餌の消化に時間がかかるため、体重が停滞。

〇高水温期（28度超）の場合
餌の食いつきが悪くなり、さらに消化酵素の活性も低下しているため、成長が停滞。

また、高水温期には、ブリの成長が停滞するだけでなく、酸素欠乏にもなりやすいため注意が必要です。

高水温下では、海水に酸素が溶け込みにくく、さらに生け簀の網に貝類など付着物が多くなるため、環水効率が悪くなり生け簀内の溶存酸素量が低下します。

こうした被害を防ぐためにも、網の目詰まりの清掃や付着物の除去はこまめに行うことが大切です。

他にも、水温が30度以上に達すると、ブリの肝臓が阻害されたり、致死することもあるので、水質管理を徹底しましょう。

生理状態を把握し、水温にあった給餌管理を行う

ブリは水温によって体内脂質の代謝方法を変える魚種です。

水温の高い夏場では、体内で蓄積した脂質をエネルギー源として消費するため、体はほっそりします。

反対に、水温の低い冬場では、体内の脂質を体脂肪として蓄積するため、まるまると大きくなります。

こうした生理状態を把握し、水温にあった給餌管理をすれば、餌代のコストもおさえることができるでしょう。

ブリ養殖の水温の注意点

夏の高水温期は、海水の溶剤酸素量が低下するため、ブリは酸素欠乏になりやすい状態にあります。

そのため、適性な飼育密度になるように生け簀を管理し、酸素欠乏にならないように網の目詰まりの清掃を行いましょう。

また、高知大学教育研究部の「ブリ養殖における季節に合わせた餌の開発」によると、餌の食いつきが悪い高水温期には、エネルギー源に適した植物油を配合した餌を与え、脂質を体脂肪として蓄積する低水温期には、マグロ油を配合した餌を利用すると効率よく成長すると発表しています。

このように、ブリ養殖では、高水温期と低水温期によって、季節（水温）に合わせた餌の質や量を管理することが重要です。

ブリの養殖方法についてはこちらをご覧ください
「ブリの養殖はどのように行われているのでしょうか？」