アスパラガスとブロッコリーを中心に野菜を作っています。
佐賀県は年間を通して比較的温暖な気候に恵まれているので、雨よけハウスで1月から10月まで長期にわたって収穫できるのですが、ハウス内に加温施設がないので、春どりは保温をしながら収穫し、夏どりは葉焼けや病害に気をつけながら、遮光カーテンなどを使ってハウス内の温度調節を行なっています。
アスパラガス栽培を始めて20年近くになります。
若い頃はなんともなかったのですが、夫も私も還暦間近となり、最近は腰をかがめる作業が苦痛になってきました。
というのも、アスパラガスは収穫用のハサミに付属する物差しで1本ずつ長さを測って、収穫に適した27cmになったら切り揃えて選果場に運び、大きさや曲がり具合を選別し、長さを25cmに揃えて、100g単位で結束するので、出荷調整に時間がかかるのです。
アスパラは足が速いので、鮮度を落とさないようにするため、パートさんにも頼めない状況です。
特に、圃場での作業がしんどく、ヘルニア持ちの夫はあまり頼りになりません。
掃除機ですらロボット化しているのに「なんとかならんもんだろうかねえ」と話しあっていたところ、他の野菜では自動収穫ロボットが開発されているという話題になりました。
アスパラについてはどうなのでしょうか?
近所の農家も高齢化しているので、例えば共同で導入するとか、そう言った形で利用できないものでしょうか?
(佐賀県・松尾みどりさん/仮名・58歳)
東榎田 晃太郎
inaho株式会社Agri communicator
腰をかがめないで済む「高畝栽培」への転換を!作業負担が軽減されます。ロボット導入はそれから
私たちは、テクノロジーを通じて農業をサポートし、AIを活用した収穫ロボットなどの開発を行なってます。
アスパラガスについては、ビニールハウス内を自動走行して収穫するロボットの開発を進めていますが、ご相談者さまには、まずは「高畝栽培」の導入を紹介したいと思います。
ご相談者さま同様、全国のアスパラガス産地では、高齢化によって農家の体力の衰えや労働力不足により、栽培面積が減少傾向にあります。また、アスパラガス株の経年や自然災害(水害、台風)に伴って、単位面積あたりの収穫量も少なくなっています。
そのため、畝が低く、水害のリスクが高い従来型の栽培方法(「平畝栽培」)を続けている農家にとっては、収穫作業や管理作業時に足腰への負担が大きくなっています。
ヘルニアを患っていらっしゃるような農家さんにとっては、足腰を曲げ伸ばしするたびにつらい思いをすることになるのです。アスパラ農家にとって、高齢化が進むにつれて、若い頃と同じ広さの生産面積を維持することが難しくなっているのです。
この課題を解決するためには、「高畝栽培」をご案内させて頂ければと思います。
高畝栽培とは、畝と畝との間の通路幅を拡げ、収穫する側の通路側面に枠板を立てて、高さ60㎝ほどの畝を成形する栽培方法です。(写真参考)
畝を高くすることにより、立ち姿勢での収穫が可能になり、平畝栽培と比べて、足腰への負担が軽減されます。
さらに、近年、ひんぱんに発生するようになったゲリラ豪雨などの水害対策にもなり、アスパラガスの安定生産へとつなげることが可能になります。
また、枠板を設置することで、作業者とアスパラガスまでの距離が短くなりますから、奥の方に生えている株を収穫する際に、腰を曲げ伸ばしすることなく、身体的な負担が軽減されます。
このほか、畝と畝との間が広がるので、1本1本の株に太陽光が当たって光合成効率が高くなりますし、風通しも良くなりますから、アスパラガスの生育に適した圃場環境を作ることができます。まずは高畝栽培への転換をお考えいただいて、自動収穫ロボットについてはそれからご相談ください。